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鷲田祐一教授インタビュー:未来に“備える”ための「未来洞察」

更新日:4月14日

まったく予測できなかったコロナ禍で、大きな注目を集めている『未来洞察』は、現在の延長線上にある未来予測ではなく、ジャンプした未来を見通すことです。その研究の第一人者であり、SMOの先生でもある一橋大学鷲田祐一教授に、今、未来洞察が求められる理由についてお伺いしました。



(インタビュー:SMO 齊藤三希子)

<こちらの記事は、SMOタブロイド誌「TOKYO 2021」からの抜粋です。タブロイド誌全編及び最新版の全編は、こちらよりダウンロードいただけます>


 





齊藤:未来洞察バブルが起きているとお聞きしました。


鷲田:そうなんです。企業からの問い合わせ、実施案件がこれまでと比較して、飛び抜けて多いです。


齊藤:ますます必要とされてきていますね。そして、過去に実施した未来洞察が、どんどん現実になってきているそうですね。


鷲田:2014年にやった未来洞察が、3個のうち2個当たっているんです。「感染症対策が国策になる」と、「中国を世界が試す10年になる」。


齊藤:すごい!その通りですね。


鷲田:個別のインシデントは全部外れているのですが、全体としては「防疫対策が国策になる」と書いていました。当たるんだなと思いましたね。2014年にやったスキャニングマテ

リアルは、病気のものが多いですね。


齊藤:当時、鳥インフルエンザが流行ったことも関係あるのでしょうか。


鷲田:あったのでしょうね。感染症対策を真面目に考えて、それを発生する10年前にリアルには書けないですよね。ただ噛み合っているのは事実なので、本気でやればできるんだなという事がわかってしまって、怖いなと思いました。ただ書いたところで本気にはしないですよね、難しい問題だなと思いますが、方法としては十分使えると思います。


齊藤:未来洞察で出てきたシナリオの使い方で、推奨されている方法はありますか?


鷲田:最近はアニメを推奨しています。イメージしやすく、程よくゆるいので、未来の物として受け入れられるんですね。そこから、自分たちの事業にどう当てはめていくか、考えやすいと思います。


齊藤:コロナ前後で、変わったことなどはありますか?


山田:一橋大学でのワークショップを分析し、コロナ前後で比較すると、コロナ後2つの傾向がありました。一つは、明らかに楽観的な傾向、もう一つが、短期思考になっている傾向です。短期志向では、変化にイノベーションの可能性を感じている「イノベーションの芽」という仮説が妥当ではないでしょうか。なぜ楽観的傾向が出て来たのかについては、中国が案外ちゃんとした国だということがわかってきたからではないかと思います。環境問題の一番の問題は中国でしたが、アメリカがパリ協定を外れ、中国が出てきた、コロナも中国がしっかりと克服していて、少なくともアメリカに伍するだけの政治力を有していることがわかりました。


齊藤:トランプ政権も影響しているのでしょうか?


山田:バイデンになっても社会分断は戻らないでしょうし、分断がある以上、分断がある以

上、アメリカは今までのようには最大のバフォーマンスは出せない。一方中国は着々と課題を克服していて、言われているほど悪くありません。日本では、社会格差という話が出ています。地方と都市、若者と高齢者。どちらの格差も同時に広がると思いますが、若者と高齢者の社会格差が最も強いでしょう。高齢者はデジタルに弱いが、若者は上手に使いこなせる。結果的に、高齢者の弱者が、社会弱者になるだろうと。


齊藤:短期思考はどのように出ているのでしょうか?


鷲田: 11~20年後くらいと見ていたシナリオが、もっと手前で実現するという考えが増えています。5~10年、全体として短期思考ですね。2019年の初めにやった洞察では「2023年テレワークが当たり前になる」と出ていて、前倒しでその通りになっています。

AI、自動運転、食料問題、環境問題、みんな5年くらい前倒しですね。


齊藤:格差のシナリオについてはどうでしょう?


鷲田:高齢者は分断しますが、若者も格差がはっきりする。お金がない人はAIも新しい技術も拒否する。仮にこれが年齢による格差だとすると、解消はしないシナリオになります。


齊藤:先生は、2021年はどういう年になるとお考えですか?


鷲田:これだけ楽観的にみんな捉えているので、リバース・バブルは間違いなくくるでしょう。


齊藤:オリンピックは決行されると思いますか?


鷲田:何がなんでもやるでしょうね。やらない選択肢はないですよね。2025の万博もかなり力が入っているので盛り上げの材料としてやるでしょうね。やりすぎるとどこかの国で株価バブルが起こって、あとは土地の値段でバブル経済が破裂してというのがいうのが1,2箇所で起こると思います。ただ全体としては緊縮財政みたいなことをする意味はないと気づいてしまって、あらゆる国が、国家をもとにした産築開発を進めるでしょう。結果的には中国型の政治の仕方が普及して、中国政府はリーダーシップをとってくるでしょう。日本も国家

主導の産業が出てくるでしょう。国主導で、観光地開発、誘致とかを本気でやらないと成り立たないですね。特にオリンビックはそうです。


齊藤:生活者の変化はありますか?全体的に楽観的になっているという傾向はあるのでしょうか?


鷲田: ITを使いこなせる若者たちは AIを怖がらないので、共存する。それより上の中高年は二極化の道を歩むでしょう。若い層は競争しますし、加えて、訪日キャンベーンでやってくる大量の外国人がいるので、移住移民を含めて入ってきます。中国で自由を考える人達は特に本気で考えていますよね。


齊藤:まさに香港に住む中国人の友人が言っていました。


鷲田:この先5〜10年でわかると思いますが、移住者、移民がやってくるのは日本にとっていいことだと思いますね。ただ台湾、香港に関して、この先10年くらいで中国は軍事行動を必ず起こすので、そうなったときにどうするのかは大きな問題です。


齊藤:日本としてどうするのかということですね。


鷲田:きっと中国側が、ここに入らないと中国とうまくいかないよという感じのものを作るでしょうね。2040、2050年くらいになるかもしれませんが動くと思いますし、そのきっかけがここ5年で起こる可能性は十分あります。


齊藤:2040、2050年という話がありました。先生のところに沢山の企業が未来洞察の

依頼をしていますが、そのとき、どのくらい先の未来を求めることが多いですか?


鷲田:5年くらい先でいいかなと思いますね。手前の方に面白いシナリオがあれば、見えるしみんな満足しますね。その先のことはみんなが考えることがいいです。不確実性に対する考えが変わりました。昔は当ててなんぽ、先へ先へと行く傾向が強かったですが、今は手元で面白い話ができればいい、あとは心楼えでいいよとなっていて、これは極めて正しい普及の仕方だと思います。予測じゃなくて、洞察というのを、みんなが言ってくれるようになったから僕が一番得しています(笑)


齊藤:予測じゃなくて洞察だ、ということがわかってきたと。洞察は、先生のワードで想像する/image、心構えを作るということですよね。想像しておけば、あわてない、地震の訓練と一緒ですね。日本の若者はどう見られますか?分断していますか?


鷲田:いや、MBAの子も学部の子もそうですが、分断ではなく使い分けている。一橋に入ったのは大企業に入るためで、入社後に自分がやりたいことがそこにはないとわかっているので、辞めていつか起業したいという子は沢山います。そういう目で見たとき、この4年で何を学ぶか考えているので、ちょっと今までと違いますよね。結果的にはマーケティングがすごい人気です。


齊藤:我々は企業の存在理由(バーバス)のワークショップをやっていて、強みと情熱の掛け合わせでバーバスを策定しているのですが、みなさんどうしてもニーズは顕在的なものになりがちです。潜在ではなく、知らないことすら知らない物を探りに行く、洞察のワークを交えていくとより射程の長いバーバスになりますね。


鷲田:やっておくと、対応力が強いですね。


齊藤:世界のビジネス産業にはどんなことが起きそうでしょうか?


鷲田:Googleなどは普通の自由競争なら圧勝ですが、国家資本主義になったらこれは制限できてしまう。Facebook、Googleあたりは、狙われますよね。Amazonは多分つぷれない。あんな強いビジネスモデルないです、だって普通のリテールなので。本当の意味でのDXですよ。自動車は、電気自動車がくるかどうかは怪しい。電気自動車は使い勝手が悪いから普及しにくい一方で、物を燃やして走らせるのはとてもわかりやすいし、簡単には置き換わらないと思います。日本は電車の技術を利用できるから有利ですね。電動化した際に社会的に何が起こるかに関しては、日本はレベルの違う蓄積をしています。これは長期的に財産になると思いますね。


齊藤:先生が注目されている国や人はいらっしゃいますか?


鷲田:圧倒的に中国ですよ。足りなかった「信用」がついてきたので。習近平はさすがに強硬すぎますが、そのうちまともな人がリーダーになってまともな国になるでしょうね。

中国は分裂するだろうと口々にいっていましたが、分裂せずですね。カリフォルニアだけでも十分やっていけるのでカリフォルニア共和国が生まれるかもしれないです。合衆国の意味合いが悪い方向にでてきてしまうでしょう。共和国制みたいなのができていないので、非常

に分断しますよね。2070年くらいは多分戦後で、今の20代が老人になる頃、全然違う日本になっていると思います。技術でどうのこうのという国ではなくなると思います。


齊藤:「ものづくり」より先の未来を考える時代がきましたね。


鷲田:中国とどう付き合っていくか、さわめて政治的な国になります、悪くはないと思いますけどね。このまま衰退していく国にはなりたくないですから。アメリカの旅地を受け入れ

るとかどうでもよくなるでしょう。コロナはそういうことを考えるきっかけになりましたね。おもしろいなと思いました。


 

鷲田 祐一(わしだ ゆういち)

一橋大学大学院商学研究科教授

専門は、マーケティング、イノベーション研究。1991年一橋大学商学部を卒業。

(株)博報堂に入社し、マーケティング局に所属。生活研究所、イノペーション・ラボで

消費者研究、技術普及研究に従事。2003年にマサチューセッツ工科大学に研究留学。2008年東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程を修了(学術博士)。

2011年一橋大学大学院商学研究科准教授。2015年より現職。