視点1:企業に見られるパーパスの2分類 – TransactionalかTransactionalか
戦略コンサルタントのサイモン・メインウォリングは、著書『Lead with We』の中で、「Transactionalパーパス」と「Transcendent パーパス」という考え方を紹介している。サイモンは、ハーバード大学の研究から導いたこの説について、以下のように定義する。
Transactionalパーパス
Transactionalパーパスとは、顧客に対して機能的ニーズを満たすか、また、企業が顧客のためにどのように価値を創造するかに焦点を当てた、取引ややり取りに関するものである。
Transcendent パーパス
一方、Transcendent パーパス は、いかに生活をより良くするかという、超越的なもので、パーパスに意味が含まれる。組織内の個々人のモチベーションを高め、ステークホルダーにインスピレーションを与えるものである。
著者は、Airbnbのパーパス「Creating a world where anyone can belong, anywhere」を良い例として挙げている。Airbnbの創業者曰く、
「 長い間、Airbnbは家(House)の貸し出しの場と考えられてきましたが、実際には、Airbnbは「うち(Home)」全般に関するサービスです。「家(House)」は住む空間でしかありませんが、「うち(Home)」は自分の居場所のことです。現代のグローバルコミュニティでは、人々はようやくどこにでも住む「うち(Home)」を探せるようになりました。それが、私たちの会社の核となる考え方、”belonging “です。」
パーパスに、この2つの要素がどちらも含まれている企業も存在する。例えば、ソニーのパーパス:
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」
このステートメントには、2つの要素があり、「クリエイティビティとテクノロジーの力」は「Transactionalパーパス」、「世界を感動で満たす」は「Transcendent パーパス」に該当する。
視点2:「都合の良いパーパス」vs.「ディープ・パーパス」
ハーバード・ビジネス・スクールのランジェイ・グラティ教授は、著書「Deep Purpose: The Heart and Soul of High-Performance Companies(邦題『DEEP PURPOSE 傑出する企業、その心と魂』」の中で、「都合の良いパーパス」という考え方を紹介している。彼曰く、
「 実際、理想的なパーパスを掲げ、社会に貢献するためにさまざまな行動をとっていても、ステークホルダーに損害を与える製品やサービスを販売し続けている企業が数多く存在する…。彼らは 「都合の良いパーパス」を実践してしまっているのだ。」
著者は、都合の良いパーパスには数タイプがあると説明する。例えば、儲けのために、高尚で感動的なパーパスで顧客を引きつけようとするケース。これを「偽装パーパス」と呼ぶ。もうひとつは、「うわべのパーパス」。グラティ教授によれば、「うわべのパーパス」を取り入れる企業は、「パーパスを策定し、実現への手段を講じるも、対して努力をしておらず、本業のその次として扱われる」のだという。
一方で、著者は、もう一タイプの企業、すなわち「ディープ・パーパス企業」が存在すると考えている。徹底的にパーパスを追求することで、より多くの共有価値を創造しているような企業である。パーパスを実行し、パーパスをすべての行動の拠り所とし、まさに「偽りのない真のパーパス」である。
この「都合の良いパーパス」と「ディープ・パーパス」の区別は、企業とそのパーパスを評価するための有用なフィルターツールだ。ある企業が新しいパーパスを誇らしげに発表していたら、その企業が「本物」か否かを理解するために、このフィルターを使って、以下のような項目を確認してみよう。
その会社は、パーパスにどれだけコミットしているか?
彼らの行動は、どの程度、パーパスに沿っているか?
視点3:新しい視点と古い視点を交えて
ネットプロモーターシステムの創立者フレッド・ライクヘルドは、偉大な企業のパーパスは一つであると主張している。 近著『顧客愛」というパーパス』の中で、彼はこう書いている。
「企業に関して、大胆な主張なようだが:常に成功するようなパーパスはたった一つである。もちろん、「善への力となる」「最も低コストで最も効率的なプロバイダーになる」「業界最大手になる」「テクノロジーリーダーになる」「働きやすい職場になる」「顧客に幸せを届ける」「汚染を減らす」「良い統治モデルになる」「株主利益を最大化する」「公平性と社会正義を改善する」など、魅力的なパーパスはたくさんある。しかし、最もレジリエンスが高く、持続的な成功を収めている企業は、一貫して「顧客の生活を豊かにする」というパーパスを選択している。
顧客を中心とするパーパスという考え方は、決して新しいものではなく、実は、今から50年ほど前に、ピーター・ドラッカーは『Management – Tasks, Responsibilities, Practices』の中で次のように書いている。
「 事業が何であるかを知るためには、そのパーパスから始めなければなりません。そのパーパスは、ビジネスそのものの外側になければならない。なぜなら、企業は社会の一組織だからです。ビジネスのパーパスの定義は、ただ一つ、「顧客を創造する」ことなのです」
このように、パーパスを新しい方法、古い方法、2つのどちらの定義を見てみても、企業がどう表現するのであれ、そのパーパスは「顧客を創造する」ということを意味する。つまり、すべての道は顧客の創造につながるはずだということだ。つまり、パーパスの表現というのは、顧客を創造するいろんな方法のバリエーションであるということだ。そのために、社内外のステークホルダーにとって適切で、かつ彼らに響くような表現にすることが重要である。
まとめ
これら3つの視点から、3つの視点を抽出することでパーパスステートメントを評価することができる。
パーパスが超越的(transcedent)であり、取引的(transactional)でないかどうか
パーパスが偽りなく、ディープか(またはそうなりうるか)どうか
パーパスが、顧客の生活を豊かにすることにつながっているかどうか
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