新会社発足のタイミングで、お客様の多様な「現場」に寄り添い、課題解決に向けたお役立ちをし続けられるよう「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」というパーパスを策定されたパナソニック コネクト株式会社。パーパスとカルチャーの重要性、策定から浸透までの取り組み、その後の反響について、日本企業・外資企業で25年以上にわたりBtoBマーケティングの経験をされたCMO山口有希子さんに熱く語っていただきました。
(インタビュー:SMO 齊藤三希子)
齊藤:パナソニック コネクトさんが、パーパスを策定され、パーパスに根付いた活動をなさっているとお聞きし、本日はお話をお伺いできるのを楽しみにしていました。
CMO山口さんについてまずはお尋ねしたいのですが、元々日本IBMにいらして、こちらのパナソニック コネクトに転職されたきっかけはなんだったのでしょうか?
山口さん:新卒でリクルートコスモスに入社後、退職・インターバルを経て、日本企業で働いたのですが、女性がキャリアをつくるのはハードルが高い環境だなと…。自分には外資系企業が向いていると思い、20代後半から外資系でのキャリアを歩み始めました。赤裸々に言うと、”日系企業を諦めた外資系”(笑)。でも、キャリアの後半になって、外資系で獲得してきた知見を、日本企業に活かせるかなと考えつつも、普通の日本の大企業では難しいかもと、ぼんやり考えていました。
そんなときに、今の弊社の前身であるパナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社に、外資系マインドをもつ樋口(社長)が出戻ってきて、会社を変革するメンバーを探しているということで、自分の専門である「B2B企業のマーケティング」が必要という話がきました。想定外でしたが、話を聞くうちに、みなさんの変革に対する熱い想いが伝わってきたんです。日本IBMにいてハッピーだったのですが、50歳を前にして、それならこのタイミングで改めて日本企業で挑戦してみようと思いました。
齊藤:それは、なにか呼び寄せるものがあったのかもしれませんね。B2B企業のマーケティングが必要だったから入ったとおっしゃいましたが、肩書きによるといろいろ兼任されていて。
山口さん:はい、マーケティング以外にもデザイン、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)と、カルチャー推進を担当しています。DEIについてはCFOの西川と組んで、CFO(西川さん)xCMO(山口さん)というあえて人事でない2人の役員がペアで、しかも社長直下で推進しているという体制にしています。そこにCHRO新家を加えて3人の役員が連携して進めています。西川と私が、現場メンバーとの対話会を行い、その内容をもとに各事業部長とのセッションを実施する「DEIキャラバン」も定期的に行っています。
なぜ今こそパーパスが重要なのか
齊藤:長く外資系にいらして、いつ頃からパーパスの概念を意識されるようになったのでしょうか?
山口さん:私が働いた外資系の会社は、パーパス的な考えやそれに伴うコンセプトは、ずっと持っていたと思っています。パーパスという言葉はある意味最近ですけど、20年以上前にいた外資系企業でも、当時パーパスでなくミッションと言っていて、それを実現するカルチャーが大事だと。今で言う、大きな社会を動かすパーパス、そしてそれを実現するカルチャー。これをセットにした考え方の重要性をかなり前から叩き込まれていたわけです。
齊藤:まだ20世紀のころからということですね(笑)。私たちSMOが、パーパスを軸にしたコンサルティングを始めたときは、日本でほとんど誰もパーパスを知らないという状態でしたが、それでも2011年ごろからでしたので、凄いですね。直近でいらした日本IBMさんについても、先日インタビューさせていただきましたが、パーパス・ドリブンのお手本のような企業ですよね。
山口さん:IBMでは、カルチャーやトランスフォーメーションという言葉をとても大切にしていました。在籍中に、全社員が参加して本来あるべきカルチャーやバリューズを皆で決めるプロセス「Value Jam」も経験しました。マーケティング部内のEmployee Engagementチームも担当していたので、その考え方がなぜ重要で、どう浸透させるのかについて、米国本社の考えを直接聞く機会もあり、理解を深めることが出来ました。多様な社員が在籍しているからこそ、パーパスやバリューズを明言しないと統率できないので、そこに対するお金・時間・パワーの掛け方が日本企業と全然違うように思います。日本は、民族・言語の多様性もなく、言語化しなくてもだいたい理解できる、昔でいう「背中を見て学べ」的なところがありましたけど、今になって、若者と年配者の感覚も全然違ってきていて、価値観が多様化する中で、企業にとってもパーパスやバリューズが必要になってきているフェーズだと感じています。
齊藤:なるほど、文化的な違いも大きいということですね。日本も、年代のギャップはもちろん、海外人材も増えていますから、パーパスやバリューズによる組織の一体化は、今後ますます重要になりますね。
パーパスの策定から浸透まで
齊藤:さて、そんなみなさんの拠り所になるパーパス「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」を策定されていますが、新会社が発足するタイミングでの策定だったのでしょうか?
山口さん:そうです。元々2022年4月からのパナソニックグループ事業会社制への移行に伴い、新しい事業会社としてミッション・ビジョンを作るという話だったのですが、議論の結果、パナソニック コネクトとしてはパーパスを策定しようとなりました。
パーパスの言葉として研ぎ澄ませるために、短く、インパクトある形にするところにはパワーをかけましたね。弊社のソリューションは企業の現場を支えるために存在する事業だからこそ、パーパス内の文言の「現場」という部分にかなりこだわりました。現場をパナソニック コネクトの力で変えていくことを分かりやすく伝えていくためにも、パーパスを噛み砕いた内容のブランドストーリー(Our Story)も議論しながら作成しました。
齊藤:そこでレイ・イナモトさんをはじめ、一流のクリエイターが入られたんですね。
山口さん:パーパス策定のための外部の専門家と社内のメンバーで構成する「チームコネクト」を作り、コピーライターやクリエイターの方に加わってもらいました。そのメンバーのレイさんや佐々木康晴さんも「日本の企業をどうにかしたい」という想いが、わたしたちと一緒だったことも連携がしやすかったですね。
また、日本語だけでなく英語版のパーパス「Change Work, Advance Society, Connect to Tomorrow.」も作りました。グローバルの会議でアメリカ、ヨーロッパやアジアの社長やマーケティング責任者と議論すると、アメリカのチームとヨーロッパのチームでは、同じ意味の英単語でも好みが分かれたり、アメリカは強い言葉が好きなんだけどヨーロッパはマイルドだったりして興味深かったですね。
齊藤:SMOでも英語化のお手伝いをすることが多くありますが、好みは分かれますよね。日本の経営層は説明っぽいものが好きだけど英語ネイティブの各国経営層は反対している、とか。
山口さん:作るのは1つなので、いろいろ意見はあると思うけどお互いの意見を尊重しながら、一緒に決めようよ!みたいな感じでした(笑)。ただ、過去のオープンな議論を通して、良い関係のベースができていたので、最終的には皆、納得の上、1つにまとまりました。
浸透は終わりがない
齊藤:多くの方を巻き込んでいくのは、その後のパーパスの浸透に有効ですね。
山口さん:そうなんです!パーパスを作って、「はいできました。使ってください」じゃダメで、腹落ち感が重要ですね。今は北米やヨーロッパなど各地域ごとに咀嚼して、色々なところで展開してくれています。それが嬉しいですね。
齊藤:すでに各地域で展開されているとは素晴らしいですね。国内での、現場での浸透はいかがですか?
山口さん:人事や総務部門と連携してオフィスブランディングや人事制度との連携など色々やっています。パーパスの言葉を覚えてもらうだけじゃなくて、コアバリューズも含めて、それをどう行動に移していくか。これ、終わりがないんですよね。
(一同、深くうなずく)
山口さん:日々の業務には中々映しづらいのですが、パーパスとバリューズのどちらとも、働く場所の様々なところで目にするように、意識しながら動きができるように配慮しています。
齊藤:そのバリューズが、Our 5 Core Values「Connect、Empathy、Result、Relentless、Teamwork」の5つなんですね。
山口さん:Our 5 Core Valuesの5つのうち、一番重要なのがConnectです。社内はもちろん、お客様ともコネクトして、「つなぐ」「つながる」ことによって、新しいイノベーションを起こすということなんですけど、そのコネクトを意識する従業員のことを「CONNECTer(コネクター)」と呼んでいます。社長の樋口のメッセージの中にも、コネクト、CONNECTer、というのが頻繁に出てきますね。
齊藤:リーダーの、パーパスへのコミットがまず、重要ですよね!私たちも常々、パーパス策定のご相談があった企業やお手伝いをした経営者の方々にそうお話ししています。
山口さん:まさにそうです!例えば私たちが重視しているカルチャー&マインド改革。これの3要素というのが、DEI・働き方改革・コンプライアンスの3つです。いろいろな施策を積極的に実施しています。例えば、日本で一番ハラスメントに厳しい罰則を導入するとか、男性育休100%を達成する取り組み、LGBTQ+のサポートや平等法への賛同とかですね。私たちが自分たちの働く「現場」を変えることによって、他の会社にも影響を及ぼし、その輪が広がり社会がよりよく変わっていくーこれこそ、「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」っていうことだと思うんです。
齊藤:企業が大きくなればなるほど、同調圧力みたいなもの、ありますよね。先陣切ってやっていくというのは、中々出来ることではないです。
現場という言葉に込められた意味
齊藤:パーパスの中の「現場」という言葉、これはどこを指すのかなと思っていたんですけど、今のお話を聞いていて、すべきことをやってる人たちが「現場」なのかなと思いましたが、いかがですか?
山口さん:はい。色々な意味ではありますが、まずはお客様の現場のことですね。お客様の現場が私たちが提供する製品やソリューションによってプロダクティビティー(生産性)を上げたり、もっと働きやすくなったり、働く人たちのウェルビーイングを向上させたり。例えば私たちが提供している画像センシング技術を活用した駅のホームにおける転落検知システムは、ホームで倒れそうになった人を検知、駅係員に通知してすぐ助けられる。現場の安全性を上げて、現場をより良くする。
それ以外にも私たち自身の働く現場もありますね。これをみんなで頑張って、より良い場所にしていくっていう。たとえば、私たちには自身の工場の現場もあるので、まさにリアルな現場を技術を利用しながら改革して、現場をより良くさせていくこと。
結局全ての問題は現場で発生するので、現場を大切にする。それが重要だと考えています。例えば先ほどのDEI活動についても、西川と私はまさに数週間前に出張しながら13の事業部や職能部門を回って現場の声を聴く活動をしていました。行った先では現場のスタッフと直接ミーティングして困っていることや感じていることを聞いて、その声をもとに具体的な重要課題を定義して、解決するアクションにつなげる動きを組織全体で進めています。
私と西川で「100% 心理的安全性を確保する」とお伝えし、傾聴する。そうすると、もやもやしてる話とか、現場の実情について色んな話をして頂けるんです。
齊藤:まさに直接そこの現場の方とお話しされて、包み隠さず話してくれるカルチャーができているのですね。
山口さん:もちろん、まだまだのところはありますが、この本音の話がすごく貴重だと思っています。現場から話を聞くことで私たちがやっている施策を再考したり、課題を反映した新しいプログラムを導入したり、変えていけるんですよね。それはDEIだけではありません。クオーター(四半期)に1回、全社集会「ALL HANDS MEETING(オールハンズミーティング)」というのをやっていて、毎回リアルタイム視聴で 約1万2000 人が参加するんですけど、そこで5200件ぐらいのフィードバック、1000件以上のコメントが来ます。
齊藤:凄い数ですね!
山口さん:自由に書ける分、中には結構厳しいコメントもありますが、そういう意見も経営会議(Connect Leadership Team Meeting)で皆に共有してディスカッションしています。
5年間で劇的に変化が
齊藤:一方で、パナソニック ホールディングスとしても、ブランドスローガン「幸せの、チカラに。」を策定されました。なにか関係性はあったんでしょうか?
山口さん:「幸せの、チカラに。」のベースの考えは、松下幸之助創業者が大切にしていた「物心一如」という、物と心が一体で幸せな状態という仏教用語から来ていて、パナソニックとして大切にしていることは昔から変わらないんですよね。私たちはその幸せのチカラ力になるために「現場から社会を動かす」そういう意味で松下幸之助創業者の DNAで繋がっていると考えています。
齊藤:本社から、策定の仕方やプロセスを聞かれたり、共有したりしたのでしょうか。
山口さん:先日も本社から依頼され、グループ各社のブランド責任者にパナソニック コネクトがいかにしてパーパスを作ったのかを共有しています。100人以上のプロジェクトとして、リーダーは私で、オーナーはCEO樋口、CSOの原田とも連携した体制で進めました。事業会社や各職能とも連携した全社体制でのプロジェクトでした。
齊藤:それは素晴らしいシェアですね。
山口さん:私たちもほんの5年前は直轄のマーケティング部署は無かったわけですが、それを4-5年かけて組織や機能を新たに創ってきたからこそ、こういう全社プロジェクトのプロジェクトマネージメントができる素地が出来てきたと思っています。いいタイミングだったなと思います。
この5年間で、働く環境も劇的に変化しました。オフィスも最初は普通の固定席だったのがフリーアドレスに変わり、今まであった社長・役員室を全撤廃しました。そもそも昔は平社員の椅子、課長の椅子とかって種類が違いましたけど今はみんな一緒にして(笑)。最初は抵抗あったのかもしれませんが、やったらやったで意外とすぐ慣れるもんですね。
齊藤:先ほどご案内いただいたオフィスでも、役員の方もオープンにその辺にいらっしゃって。バリューズが貼ってあって、常に目に止まるようになっているのも印象的ですが、各テーブルにホワイトボードがついていて、アイデア出しがしやすい環境づくりも工夫されているなと思いました。
山口さん:でも本当に浸透するかどうかは、結局リーダーの行動次第だと思うんですよね。リーダーが本当にそのバリューズを体現しているか、自らやっているかどうかって、やっぱりみんな見るじゃないですか。だから本当にそこに尽きるかなと。
齊藤:我々もまさに日頃から経営層の方にそうお伝えしています。数字が厳しくなったり、問題があるとついそこを解決することに注力してしまいがちなのですが、リーダーがどれだけパーパスを信じて、行動しているかが鍵だと。
山口さん:まだまだチャレンジ中ですけど、カルチャーに関して妥協をしてはいけない、と思っています。それを一番意識して、社長の樋口自ら強く伝えていますね。
健全なカルチャーがすべての基本
山口さん:樋口はパナソニックで働いていてハーバードでMBA取った後に一度辞めているのですが、「当時自分がパナソニックを辞めた理由をなくす!」と言っています。当時は若かったから、「若造が生意気だ」とか言われたりしたそうですね。より良い会社にしたい、そのために健全なカルチャーを創る、という思いがとても強いリーダーだと思います。
齊藤:リーダー自ら、とても信念を持ってお仕事に取り組まれているんですね。山口さんはカルチャーについてどうお考えですか?
山口さん:私もカルチャーは企業のすべての基本だと思っています。どんなによい戦略や組織能力があっても健全なカルチャーがないと企業は機能しない、と思っています。なので、健全なカルチャーを創ることにとてもパワーをかけています。パナソニック コネクトが、セクハラ・パワハラ撲滅に向けて、徹底的に妥協せずやっているのもそのためです。
業績評価だけでなくBehavior評価を重要視するのも、カルチャーをきちんと正しくすることが重要という信念があるからです。
齊藤:いいスパイラルですね。
山口さん:健全なカルチャーがあってこそ、その企業は正しい戦略、そして能力をつけられると思っています。コアバリューを実践する行動が重要というメッセージを示しています。
齊藤:会社としての「健全なカルチャーの定義」があったら教えていただきたいです。
山口さん:大企業病の反対といえばイメージがわかるでしょうか。「オープンコミュニケーション&フォーマリティ(形式的な縛り)の排除」が重要だと思っています。ヒエラルキーが支配する世界ではなくて、そうじゃない世界を作る必要がある。ヒエラルキーはオペレーションの時に必要ですが、 フォーマリティがありすぎると、本当に決定スピードが遅くなる、そして嫌なことがすぐ言えなくなる。良くないことが起こっても「すみません、ご報告差し上げます」って 2 週間ぐらい経ってやっとレポートに出す…みたいな、日本の企業にありがちな大企業病が、組織の中でのアジャイルなスピードを無くし、企業の競争力が棄損すると思います。
私たちが行っている服装の自由化や席のオープン化、無駄な作業の効率化などは、あくまでも戦術としてやっていますが、最終的にはフォーマリティを排除して、もっと素早い意思決定をできるようにしたい。そしてその分の時間やパワーをお客様や市場に向ける。そのための手段なんです。手段の先に明確な目的があり、それが企業戦略として定義されていなければ、それはリアルなカルチャー改革の実践にはならないと思います。
フォーマリティを排除することでコミュニケーションが円滑になり業務のスピードを上げる。そして DEI は意思決定のクオリティを上げるんですよね。業務スピードと、意思決定のクオリティ、この2つを上げないと、これからの社会では生き残っていけないと思っています。まだまだですが、チャレンジを続けていくことが重要だと思っています。
齊藤:素晴らしいカルチャーです。ぜひ見習いたいです。
自身の存在意義は3つのキーワードにある
齊藤:さきほど、山口さんのキャリアの中で、今後は日本企業に貢献していきたいというようなお話しがありましたが、山口さんの「個人的なパーパス」についてお聞かせいただけますか?
山口さん:自分の働く意味・生きている意味としては、(1)ダイバーシティ (2)テクノロジー (3)マーケティング 、この3つのチカラを信じているところにポイントがあります。
私は人が幸せに生きるためにも、ダイバーシティがすごく重要で、そのチカラが社会をよくすると信じています。例えば個性ある子供たちが、普通と違うということで、嫌な思いをしない社会であってほしいと考えています。会社としてLGBTQ+も含めたDEI活動をしていますが、これらにも共通する考えがあると思っていて、これまでの「普通」ではないことや、少数であることによって、守られるべき人権が確保されていない状況は改善しなくてはならないと思っています。
テクノロジーについても、テクノロジーが世の中を変え、より良い未来につながるということを信じていたいのです。Metaverse Japanの理事もやっているのは、メタバースの世界でのダイバーシティを実現したいからなんです。メタバースだからこそ出自とか性別に関わらず、本当にオープンにより良い経験ができる場所になって欲しいです。「メタバース内は匿名で何をやってもいい」ではない、「みんながより良い経験が出来る」という良いほうの世界をいかに作るか、に少しでも貢献できたらと思っています。
マーケティングの本質 x デザインの力
齊藤:それが、3つ目のキーワードである”マーケティングにも繋がっていくわけでしょうか。
山口さん:マーケティングは、Force for Good, Force for Growthともいわれています。より良いことのため、成長のためのチカラ。つまりコミュニケーションによるコネクテッドハブ。人や組織をつなぎながら、より良い方向に進めるための活動だと思っています。私もそのチカラを信じているので、マーケティングは面白いと思っています。
齊藤:マーケティングの概念をそこまで広げて自分ゴト化されている方に初めてお会いしました。よく大企業にありがちなのは、「マーケティング=売れる仕組み!」みたいな(笑)。
山口さん:最近ではクリエイティブ・アワードなども、そのメソッドをどう社会課題に使っているかどうか、そういうところにフォーカスが向いていますね。
齊藤:確かに多くの広告賞など、クリエイションの評価軸はパーパスに沿ったものであるかどうかにシフトしていますよね。
山口さん:クリエイティブという話で言えば、実は弊社では、4月にデザインとマーケティングを一緒の部署にしました(注1) 。マーケティングとデザインが一緒になると、いろいろなことをより良くする可能性が拡がると思っています。今まではプロジェクトで一緒になっても、別々の立場での連携でしたが、もっと戦略的なところから連携できるような体制に変えていこうとしています。
齊藤:それは良い相乗効果が期待できますね。お客様の反応は、いかがですか?
山口さん:まだこれからですね。でもここ 1年半少しずつ新しいチャレンジをしながら、「デザインでこんな風によくなるんだ!」というプロジェクトを増やしています。効果を実感して頂く機会が増えてきています。プロダクトデザインだけでなく、ブランディングデザインやイベントデザイン、サービスデザインなど。可能性は広がっていると思います。
齊藤:すごくわかります。私も日頃から、パーパスはもちろんのこと、そこにクリエイティブを融合させたコンサルティングというのを打ち出していて、うわべを綺麗にするだけでは効果が持続しないので、まずパーパスという軸があって、その上でデザインの力が加われば、企業は絶対良く変わっていくと信じて、お手伝いをしています。パナソニック コネクトさんは、パーパスがあり、カルチャーがあり、そこにデザインパワーが加わるとなれば、今後ますます期待ですね!
山口さん:まさに、デザイン&マーケティング連携は、経営の力になると思っています。
齊藤:ありがとうございました。
山口 有希子(やまぐち・ゆきこ)
執行役員 ヴァイス・プレジデント・CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)
(兼)デザイン&マーケティング本部 マネージングダイレクター、DEI推進担当、コネクトカルチャーHUB担当
シスコシステムズ、ヤフージャパンなど複数の日本企業・外資企業にて、25年以上にわたりマーケティング部門管理職に従事。BtoBマーケティング全般の経験を持つ。日本IBMでブランド部長およびデジタルコンテンツマーケティング&サービス部長を経て、2017年12月より現職。マーケティングだけでなく、デザイン、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)、カルチャー推進担当役員も兼任し、企業トランスフォーメーションを推進している。公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 デジタルメディア委員長、一般社団法人Metaverse Japan理事。
注1)『デザインとマーケティング部門を統合「デザイン&マーケティング本部」発足』
https://news.panasonic.com/jp/press/jn230330-7 プレスリリース(2023年3月30日)
エスエムオーでは、組織がその存在理由である「パーパス」を軸に強いブランドになれるよう、パーパスの策定から浸透までのコンサルティングを行っています。