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執筆者の写真SMO TOKYO20xx Team

ピョートル・グジバチ氏インタビュー:個人の自己実現を後押しできる組織だけが生き残れる

更新日:2023年2月16日

「働き方改革」という言葉だけが一人歩きしているように見える日本のビジネス社会。これからの働き方、組織づくりについて、Googleを始めとするイノベーションを起こし続ける企業を支援するピョートル・フェリクス・グジバチさんにお聞きしました。


(インタビュー:SMO 青山永)

<こちらの記事は、SMOタブロイド誌「TOKYO 2019」からの抜粋です。タブロイド誌全編及び最新版の全編は、こちらよりダウンロードいただけます>


 



青山:ピョートルさんは、Googleなどのグローバル企業において、人材開発や組織開発、リーダーシップ開発などの分野でご活躍されました。そして、独立後は国内外の企業を相手にイノベーションを起こす文化づくりを支援されています。ピョートルさんがそれに取り組む理由をお聞かせください。


ピョートル:私のミッションは「誰でも自己実現できる社会を作ること」です。それについて具体的にお話しする前に、私のバックグラウンドを説明させていただきましょう。私は、冷戦の真っ只中、共産主義のポーランドで生まれました。共産主義の体制下ではすべての人が平等に扱われます。つまり、仕事でいくら頑張ろうと収入は増えませんが、仕事には確実にありつけますし、それをこなしてさえいれば暮らしは守られます。それが、私が中学生の頃、資本主義の考え方が入ってきて、街には失業者が溢れるようになりました。私の二人の兄も仕事を失いました。そして、その結果、一人はアルコール中毒で亡くなったのです。確かに、共産主義には無理がある。でも、資本主義が完全無欠だとも思えません。会社というものは、人が幸せに生きることをサポートする存在となるべきなのに、資本家や経営者が、会社で働く人の人生を考えないのはおかしいじゃないですか。私はこの考え方を世の中に広めたい。だからこそ、働く意味や、会社が存在する意義を問いかけ続けているのです。


青山:それには大変共感します。我々、SMOは、ブランディングとイノベーションを支援するコンサルティングファームであり、まさに企業の存在理由=パーパスを明確にすることに重きを置いています。


ピョートル:素晴らしい。ブランディングというと、とかく可愛いロゴを作りましょうとか、ウェブサイトを構築しましょうとか、パッケージに焦点が当たりがちですが、それはブランディングの本質ではない。デザイン性は大切だと思うけど、おっしゃるとおり、ペンキを塗っただけの仕事になりがち。結局、組織開発・・・僕は人事という言葉が大嫌いなんだけど、人事=規則を作ろう、働き方改革を進めよう、給料はこうしようとか、アドミニ的なやり方は僕は賛同しかねる。結局、ブランディングというのは、社内と社外にどんなコアがあって、会社がなんのために存在していて、その存在価値を社内と社外の人間が理解していれば、会社は枠じゃなくて軸になっていく。その軸にどれだけ近づきたいかは人による。たとえば会社の商品を買いたいか、イベントに参加したいか、ボランティアで何かやりたいか、コミュニティに所属したいか、副業で働きたいか、社員になりたいか、投資家になりたいかは人それぞれなんですけど、きれいな軸がないと人が集まってこない。たとえばエアビーアンドビーやウーバーとかフェイスブックとかグーグルかのような会社だと、すごく会社に魅力を感じている人たちがいて、会社のために無理、譲歩する。


青山:コアとか軸とか、我々の言葉だとパーパスとか、中心に大切なものを浮き立たせないといけない。


ピョートル:働く個人が活躍できる環境を整えれば、結果として会社の生産性は高まる。だから、会社の都合で個人を変えるのではなく、個人が活躍できる環境を作るために会社が変わらなくてはいけないのです。


青山:企業のあり方から考える良いタイミングかもしれません。


ピョートル:そうです。ちなみに、私は社員たちに「やりたいことがあるならどんどんやって」と言っています。たとえば、社員が本を出したいなら出せばいい。NPO法人を立ち上げたければやればいい。そして、そのワークスタイルも十人十色であっていいと思っています。リスクをとりたくなければ、給料をもらいながら副業的に取り組めばいいでしょうし、リスクをとっても構わないのなら会社を辞めて、その活動に専念すればいいでしょう。私が考える会社とはタレント事務所のようなもの。会社は、個人の自己実現を後押しする存在になるべきです。グーグルやフェイスブック、ウーバーといった企業に人が集まっているのは、それが実現されているからに他なりません。


青山:聞いているだけでわくわくします。ピョートルさんのおっしゃるワークスタイルは、日本の企業にも導入できるものでしょうか。


ピョートル:導入しないと、これからは生き残れないでしょう。今年、働き方改革関連法が施行されて、一部の職種を除き、時間外労働の上限が月45時間、年360時間と規定されます。そうなると、会社も個人も、自分の「ギブ」と「テイク」を再定義する必要に迫られます。自分は世界にどんな価値を与えたいのか。世界から何を提供してもらいたいのか。それを考えなければ仕事になりません。誤解を恐れずに申し上げると、私は社員の労働時間そのものには興味がないんです。できることなら、なるべく働かないでほしい。1ヶ月160時間の価値を1時間で出せるなら、その方がいいと思っています。その代わり、給料は1ヶ月分を支払いますよ。だって、考えてみてください。会社の売り上げを10倍にするコツを教えてもらうのに10時間かかろうと、1時間で終わろうと、得られる価値は等しいのだから、同じ金額を払って当然でしょう? それから、日本人は“頑張ります依存症”に陥りがちです。それでいて、頑張るとはどういうことかを訊ねられると、説明できない人が多い。答えはシンプルですよ。結果を出せばいいんです。そのためにはどうするか。物事の優先順位をしっかり見極めることです。時間を有効活用するためには、to doリストではなく、not to doリストを作ったほうが賢明だと私は思いますね。


青山:なるほど。では、最後の質問です。優れたリーダーに共通する特徴はありますか?

ピョートル:何はともあれ、彼らは、私が先ほど申し上げた「ギブ・アンド・テイク」のバランスをきちんと保っています。そのバランスが決まると、日々の行動には無駄がなくなります。たとえば、朝、何を着ていくか悩むのはけして悪いことではありませんが、それには1ヶ月で2,3時間が使われている。その時間をビジネスパートナーとの会食に充てれば新たな価値を生み出せるでしょう。詰まるところ、何がインパクトをもたらすのかをわきまえているんですね。そして、確かなのは、成功する人は「やる人」であるということです。わからないけどやってみる。この姿勢があるかどうかに尽きます。今、求められるのは、変化を恐れてぬるま湯に浸かる“ゆでガエル”ではなく、ゼロから1を創り出し、世界を変える“アルケミスト”。窮屈な枠を飛び出して、楽しんだものが勝つ世界がもうそこまでやってきています。リーダーの方には、変化を乗りこなし、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

 

ピョートル・フェリクス・グジバチ

Piotr Feliks Grzywacz


プロノイアグループ、代表取締役。ポーランド生まれ。

ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、2000年に来日。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年より

モルガン・スタンレーにてラーニング& ディベロップメントヴァイスプレジデント、

2011年よりグーグルにて、アジアパシフィックでのピープルディベロップメント、

さらに2014年からは、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、

人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。


現在は、独立して2社を経営。プロノイア社では、国内外のさまざまな企業の戦略、

イノベーション、管理職育成、組織開発のコンサルティングを行う。

2社目のモティファイは新しい働き方といい会社づくりを支援する人事ソフトベンチャー。

多国籍なメンバーやパートナーとともに、グローバルでサービスを展開している。

日本在住16年。合気道や禅にも詳しい。

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