2023年6月にアスペン・インスティチュートが開催したラウンドテーブルで、プルデンシャル・ファイナンシャルの副会長(兼プルデンシャル取締役)のロバート・ファルゾンは、6年前に起きた経営陣交代時のパーパス策定について語った。
この記事では、彼らの策定のプロセスから得られる学びと、その少し風変わりなプロセスをご紹介しよう。
パーパス主導になるための3つの段階
ファルゾンは、企業のパーパスジャーニーには3つの重要なステップがあると説明する。
発見のプロセス
明文化のプロセス
コミュニケーションと活性化のプロセス
さらに彼は、組織からの「賛同」を得るためには、これら3つのステップすべてが重要であると付け加える。組織にパーパスが浸透するためには、パーパスが完全に明文化された後ではなく、パーパスプロジェクトが始まった時点からプロセスが始まっているのである。
文化とパーパスの発見
プルデンシャルのパーパス発見プロセスにおいて、自分達のカルチャーを知るために社員と対話することが重要なポイントだった。その1つとして、プルデンシャルのカルチャーについて話し合うオンラインイベントを丸一日かけて行った。ファルゾンは、カルチャーはパーパスとは別物だが、それぞれは密接に結びついていると説明する。また、カルチャーは諸刃の剣にもなりうると指摘する。カルチャーがパーパスを促進することもあれば、邪魔になることもあるということだ。つまり、パーパスを発見しようとする企業にとって重要なのは、組織カルチャーとパーパスとの関係に留意することだ。
トップダウンとボトムアップのアプローチ
プルデンシャルがパーパスをどのように明文化したかのプロセスはなかなか興味深く、ファルゾンはそれを「同時トップダウンとボトムアップ」のアプローチであったとしている。
パーパス明文化にあたってのプロセスは、まずエグゼクティブ・チームがパーパスを策定し、言葉で表現していくところから始まった。そしてその次のステップが、他ではなかなか見られないケースだ。彼らは中間管理職(トップ層より下の2つの層)に、自分たちならどんなパーパス・ステートメントを作るか、というお題を出した。その際、エグゼクティブ・チームは自分たちのステートメントとその考え方は公開しない。つまり、中間管理職チームが、ゼロからパーパス・ステートメントを作成したのである。
その結果、パーパスには2つのバージョンが存在することになった。1つはエグゼクティブ・チームによるもの、もう1つは社内を代表する中間管理職によるものである。両者の表現は異なっていたが、概念的は交じわるものがあり、パーパスの核心については完全に一致していた。最終的に、経営陣は中間管理職側から出されたパーパス・ステートメントを選んだ。それが「making lives better through solving financial challenges in a changing world」(変化する世界における財務上の課題を解決することを通じて、人々の生活をより良いものにする)というステートメントである。ファルゾンはその理由を、「中間管理職側からの案について表現方法がより優れており、組織によりよく響くものだった」と説明している。
「どのように言うか」よりも「何を言うか」
上記の例から、パーパスには2つの側面があることがわかる。
「何を言うか」:パーパスの本質。
「どのように言うか」:これはパーパス明文化で採用される、実際の言葉や表現。
プルデンシャルの場合、エグゼクティブ・チーム版と中間管理職版で「どのように言うか」は異なったが、「何を言うか」は同じだった。「何を言うか」と「どのように言うか」の区別を意識することは、特に明文化の最終段階では非常に重要である。企業は言葉をいじり始めると、良い響きにすることに執着してしまうことがある。そして、最初に本当に言いたかった「何を言うか 」を忘れがちになる。
ポイント
パーパスプロジェクトが始まったときから、パーパスの浸透と活性化も始まっている。
パーパス開発プロセスでは、文化とパーパスとの関係を理解するために時間と労力をかける。
パーパス開発アプローチに対する典型的例は、トップダウンかボトムアップである。しかし、同時にトップダウンとボトムアップをとるアプローチを考慮する第3の選択肢もある。
パーパスを明確にする際には、パーパスには 「何を言うか 」と 「どのように言うか 」の2つの側面があることに留意し、「何を言うか 」を見失ってはならない。
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