SMOに寄せられる、パーパスについて、パーパスブランディングについて、よくある質問をご紹介しています。
パーパスを表現する際に、コピーライティングは必要ですか?
この質問に答えるためには、実際にパーパスステートメントがどんな場面で使われるのかを考えなければなりません。以下の三つが典型的なケースです。(なお、どれか1つに限るということではなく、全てのケースのためにパーパスが使われるということもありえます。)
ケース1:顧客にパーパスをブランディングのために伝える。
ケース2:従業員のやる気をパーパスで向上させる。
ケース3:パーパスを決断の拠り所として使う(例:企業内でのプロジェクトや商品)。
パーパスステートメントの根本的な役割は、なぜそのブランドが存在するかを明確にすることです。しかし、パーパスが果たす役割はそれだけではなく、それがどこへ向けてのものに使われるか次第で、ステートメントの表現方法は変わってくるのです。
ケース1と2 (ブランディング + 社内のモチベーション向上)
たとえば上記のケース1と2(ブランディング + 社内のモチベーション向上)の場合、パーパスは感情的な反応を導かなければなりません。つまり、顧客を共感させ、従業員をインスパイアする必要があります。そのためにはクリエイティビティが必要で、コピーライティングが求められてきます。
ケース3 (決断の拠り所としてのパーパス)
ケース3、つまり社内での決断の拠り所としてのパーパスであれば、パーパスは明確ではっきりしたものでなくてはなりません。この場合は、クリエイティブ・ライティング抜きでも達成可能です。
我々の過去の事例では、クライアントがコピーライターなしに新商品用のパーパスを策定するケースもありました。これらのパーパスはマーケティングで実際に使われることはなく、主に内部のチームやパートナーのブランド体験作りに一貫性を持たせるためのものでした。
パーパスの汎用性
パーパスは多種多様な使用ケースがあり、さまざまなビジネスシーンで使うことができます。
例 :
企業のパーパス
チーム(部署)ごとのパーパス
ブランドパーパス
キャンペーン企画のパーパス
プロジェクトのパーパス
このようにそれぞれ異なる文脈の中で、コピーライティングが必要かどうかは、パーパスがどう使われるか次第で変わってきます。
「響きがいい」に惑わされるな
ここで、よくある罠について話しましょう。パーパスを策定する上での最後のステップが言葉での表現であり、そこには主観が混ざってしまいがちです。
主観を取り除くべきだ、というわけではなく、パーパスは一歩引いて考えないとならないこと、そしてマーケティング用のスローガンではないことを肝に命じてないといけません。パーパスを対外的に示す場合もちろん響きは良い方がいいですが、しっかりと意味が伝わるものでなければ、そうしてパーパスとしての役割を果たすものでなくてはならないのです。
すでにお伝えした通り、パーパスの根本的な役割は「なぜこのブランドが存在するのか」という質問に対する答えです。これはパーパスが乗り越えなければいけない最初の試練であり、このハードルを超えて初めて、そしてそのパーパスが誰にどう使われるのかを考慮した上で、そのパーパスの表現が適したものなのかどうかの評価ができるようになるのです。
パーパスに独自性は必要ですか?
パーパスを見つけ、表現するまでには、かなりのプロセスを要します。このプロセスの間に、パーパスそのものばかりに焦点を当ててしまいがちです。木を見て森を見ず、とならないように、パーパスはあくまで、ブランドの中の一部であることを忘れてはいけません。
どういうことかというと、多くの競合と戦う市場内では、ブランドというものは他とは差別化されて、独自性のあるものであるべきです。しかし、パーパスは、ブランドの大事な一部ではありますが、「ブランドを差別化させるためのだけの役割」は担っていません。
例を一つ見てみましょう。「enrich lives (人々の人生を豊かにする)」というステートメント。とても抽象的で、あまりユニークとは言えません。どの企業でも、このステートメントをパーパスとして掲げることができるでしょう。これは実はアップルのパーパスであり、アップルの道しるべとなるものですが、このパーパス自体に独自性はなくとも、アップルというブランドの差別化は、商品、サービス、コミュニケーションを通して行われています。
良い比喩を一つ。ブランドを果実、ブランドパーパスをその種として考えてみましょう。例えば、レモンとみかん。見た目も感触も味も全く異なる二つですが、種だけをみるとそこまで変わらないのです。
まとめると、パーパスがユニークであるかどうかの問題以前に、そのパーパスが「ブランドそのものを差別化」させる役割をどこまで果たすのかを考えなければならないのです。
Comments