先月弊社が公開した「東証プライム上場のパーパス策定企業ステートメント2023」。これらのパーパス・ステートメントを分析した考察を紹介しよう。
今年のリストには164社のパーパス・ステートメントが掲載されており、あらゆる視点で分類できる。今回は、弊社が独自の視点で見出した種類の「Short & Catchy」型（以降S&C型）を紹介しよう。
「Short & Catchy」型の定義
具体的な例を挙げる前に、まずはS&C型について定義をしよう。S&C型は、一つのアイディアを端的に伝えるために、響きや韻を用いて、短く、覚えやすいフレーズ（または文）で表現したものである。
上記の定義を踏まえ、今回のリストから下記の視点で、S&C型ステートメントを選定した。
全体が短く表現されている
一つの完全な文章ではない （動詞文がないケース、あるいは、響き重視で二つの短い文章にするケース）
リズムと響きを重視している
S&C型のパーパス・ステートメントの例
日本たばこ産業
心の豊かさを、もっと。
大和ハウス工業
生きる歓びを、未来の景色に。
エア・ウォーター
地球の恵みを、社会の望みに。
エクシオグループ
”つなぐ力”で創れ、未来の”あたりまえ”を
江崎グリコ
すこやかな毎日、ゆたかな人生
ＦＵＪＩ
人々の 心豊かな 暮らしのために
アサヒホールディングス
”この手で守る自然と資源”
船井総研ホールディングス
サステナグロースカンパニーをもっと。
三井倉庫ホールディングス
社会を止めない。進化をつなぐ。
アルペン
スポーツをもっと身近に
学情
つくるのは、未来の選択肢
ぐるなび
食でつなぐ。人を満たす。
キュービーネットホールディングス
LESS IS MORE
S&C型の注意点
デメリットとして、S&C型は、響きを重視するため、宣伝用のものとして勘違いされ、表層的なものとして捉えられる懸念がある。S&C型を検討する企業にとって、ステートメントの内容をきちんと意味が込められることをチェックし、関係者が重みと意義を感じるかどうかを検証するがポイントだ。
S&C型で上手く表現ができた場合は、その特徴である覚えやすさがパーパスの浸透に役立つだろう。意思決定や行動する際に、喚起されやすいため、組織はよりパーパス主導な経営ができる。
ポイント：本質的な回答への問いになっているか？
パーパス・ステートメント全般に対しても提言できるポイントである。響きや覚えやすさは無論大切であるが、パーパスの本質的な役割は、「私たちは何のために存在するのか」の問いに対する回答である。パーパス・ステートメントを決める時に、そのステートメントが、「何のために存在するのか」の問いに対して、自然な回答になるかどうかを検証しよう。