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  • 執筆者の写真smo inc

個人のパーパスと会社のパーパスを重ね合わせる、SOMPOグループの「MYパーパス」の取り組み

更新日:2023年6月2日

SOMPOのグループパーパスと、個々の人生の目的や志である「MYパーパス」を重ね合わせてパーパスを自分ごと化し、より深く浸透させる。その取り組みについて詳しくお伺いすべく、損保ジャパンの前取締役常務執行役員CHRO・CSuOであり、この4月から損保ジャパンDC証券株式会社の社長に就任された酒井香世子氏にインタビューしました。


(インタビュー:SMO 齊藤三希子)

 

齊藤:4月に損保ジャパンDC証券株式会社の社長に就任された酒井さんですが、3月までいらした損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)では、取締役常務執行役員 CHRO・CSuOとして、パーパス実現に向けて取り組んでいらしたとお聞きしました。まずは酒井さんのキャリアについてお伺いさせてください。

酒井さん:1992年に損保ジャパンの前身である安田火災に総合職として入社し、半年間の研修後、広島支店福山支社で社会人のスタートを切りました。同じ1992年に、当時の社長がブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットに経団連ミッションの団長として参加し、帰国してすぐ「21世紀は環境の世紀だ」と舵を切り、地球環境室という組織を作ったのです。私は1996年にこの部署に配属となり、ISO 14001という環境マネジメントシステムに関する国際規格を金融機関で初めて取得したり、今でいう統合レポートやサステナビリティレポートの作成や環境関連の社会貢献活動の企画・推進業務を担当していました。




サステナビリティに関わり始めた90年代


齊藤:30年ほど前ということですね。かなり早いですね!

酒井さん:はい。今でこそ企業が環境問題に取り組むのは当たり前ですが、当時はまだ「なぜ、損保が環境問題に取り組むの?」「何をやっている部署なの?」といった状況でした。その後、広報部でCM制作や社内広報などを担当するなど長くサステナビリティや広報部門で働いていたのですが、2014年に転機が訪れました。内閣府男女共同参画局に出向することになったのです。

ちょうど安倍政権が成長戦略を掲げ、アベノミクス・ウーマノミクスということで、女性活躍推進政策に注力している時期でした。女性活躍推進法の成立に向け局全体が国会対応等で多忙を極める中、対外的な発信も強化する必要があり、私は主に情報発信やムーブメント醸成の仕事を2年間担当していました。

会社に戻った後は、人事部特命部長としてダイバーシティや人材開発を担当、その後秘書部社長オフィスに配属となりました。ここでは社長が出席されるすべての会議や打ち合わせに帯同し、社長と行動を共にしながら経営者の視座を学びました。社長オフィスにはルーティンワークはありません。自ら課題を設定すること自体がまさに仕事でした。「君が社長の立場だったらどう判断する?」「君は、何が課題だと感じた?」と問われ続ける毎日で大変タフな環境でしたが、経営者の意思決定の瞬間を間近でみられたことは私にとって大変貴重な時間でした。

その後自らも役員となり、直近2年間は、CHRO、CSuOとして主に人事とサステナビリティ部門を所管していました。そして、23年4月から損保ジャパンDC証券株式会社の社長に就任しています。



コミュニケーションで人や組織を元気にしたい


齊藤:ありがとうございます。その中で酒井さんがパーパスと結びついたタイミングについてお聞かせください。


酒井さん:SOMPOグループでは現在パーパス経営を推進しています。「”安心・安全・健康のテーマパーク”によりあらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことができる社会の実現」という「SOMPOのパーパス」に、社員一人ひとりの人生の目的や働く意義である自分自身の志、いわゆる「MYパーパス」を重ね合わせることを通じて、パーパスの浸透やパーパスの自分事化に取り組んでいます。このことが社員のやりがいや幸せの実感につながり、新たなイノベーション創出につながると考えているのです。


酒井さん:私も、自身のMYパーパスを外部のコーチと1on1で話しながら整理してきました。そして「コミュニケーションを通じて人や組織を元気にしたい!」ということがMYパーパスだと感じるようになりました。

齊藤:それは過去のキャリアとか、ワクワクする情熱からでしょうか?

酒井さん:もともと、世のため人のためになる商品・サービスを提供したいという気持ちがあり、金融業界を目指していましたが、同時に、世界中にオフィスがあり、様々な業界の人と関わることができる点にも魅力を感じていました。私は親が転勤族で、小学校2つ、中学2つ経験しており、転校先で時に疎外感を抱くこともありましたが、コミュニケーションを取ることで人脈や視野が広がることが楽しかったですし、自身の成長につながったなと感じています。SOMPOグループでは現在およそ7万人が働いていますが、本当に多様な人たちがいて、色々な強みを持っています。それらを繋ぐことで世の中に価値を提供できるのではと考えています。


齊藤:まさに幼少期の体験や強みがMYパーパスにあって、そこからSOMPOのパーパスと重なりあうところで業務を邁進されている、という感じなのですね。


酒井さん:そうですね。誰しもが様々な思いを持っていると思うのですが、言語化する機会はなかなか無いですよね。MYパーパスの取り組みを通じて、パーパスについて深く考える機会があったからこそ自分の思いを再確認できました。


リーダーの発信と組織内の対話で理念を浸透


齊藤:役員の方々のMYパーパスはどのように共有されているのでしょうか?

酒井さん:各社各様ですが、損保ジャパンでは役員がMYパーパスを語る動画を開示していました。またDC証券でも役員・部長の動画の公開を開始しました。自分の動画は少し恥ずかしいですが、自分自身の原体験やこういう想いで仕事してます、と聞いてもらうことで大事にしていることや価値観が伝わりますし、その人を知るきっかけになりますね。

齊藤:MYパーパスの浸透に向けて動画以外にはどのように取り組まれているのですか?


酒井さん:役員や管理職向けにMYパーパス策定研修なども実施しており、役員や管理職以外の職員でもMYパーパスを作る人が確実に増えています。また1on1ミーティングで、各人のMYパーパスを聞き、何に価値を感じている人なのか・そのためにどうチャレンジしているのかなどを掘り下げることも推奨されています。


齊藤:SOMPOグループのカルチャーとして、1on1とかで対話できる環境が整っているのでしょうか?

酒井さん:1on1に関しては、かなり浸透しています。組織が大きくなってしまって、一人ひとりに向き合う機会が減っていたという反省も踏まえて導入した経緯がありますし、通常の業務中心の1on1を「コト」の1on1とするなら、MYパーパスを中心においた「ヒト」を取り扱う1on1を推進している点が、SOMPOらしさじゃないかなと思っています。コロナ禍で以前に比べて対面で話す機会も減っているので1on1はますます重要だと感じています。



年金の新しい形を伝えて、皆を幸せに


齊藤:素晴らしいですね。ところでDC証券に移られてからまだ日は浅いですが、如何ですか? 

酒井さん:とても充実しています。DCは米国では401kプランと言われているもので、DC証券は確定拠出年金(DC)に関する様々なサービスを提供するわが国でも数少ないDC専門会社です。少子高齢化の進展、公的年金財政の厳しさが増す中、「自助」の仕組みであるDCに注目が集まっています。DCは様々な税制優遇措置に加え、企業にとっては退職給付債務の対象外となることから福利厚生制度の充実・人材確保・リスク軽減の観点からも普及・定着が加速しているのです。また個人にとっても豊かな老後を迎えるためには、投資がかかせません。時間を使ってお金に働いてもらって将来に備えることがとても大切で、そのために私たち一人ひとりの金融リテラシーも上げていく必要があります。



酒井さん:DC制度を導入したら終わりというものではなく、制度導入のサポートから運用商品の情報提供、口座管理に至るまでDCに関するサービスを1社で提供できるのが当社の特徴です。まさに、「お客さまの人生100年時代を支えるビジネス」だと思うのです。当社の社員はそういった当社のビジネスの意義を十分に理解しているのでモチベーションが高いです。自分たちが提供している商品やサービスの社会的価値を理解できるとやりがいがありますよね。私も、日々学びながら楽しく仕事をしています。

齊藤:お金については、日々知りたいと思いつつも後回しにしがちなので、わかります!コミュニケーションで突破してくれると心強いです。

酒井さん:確かに少し難しいと感じることもありますよね。例えばDCの利点としてポータブルなので、転職先にDC制度があれば持っていけるし、非課税でもあるんです。転職が徐々に一般的になりつつある現代社会にフィットした制度ですので、こういった情報発信もしっかりと行っていきたいです。

齊藤:社長になられたばかりではありますが、10年後に会社をこうしたいというビジョンはありますか?

酒井さん:今の日本は少子高齢化や人口減少といった縮小の話題が多く明るい未来が描けないという方もいますが、DC事業に関しては、まだまだ伸びしろがあるマーケットだなと感じています。専門性や多様な価値観をもつ社員とともにデジタルテクノロジーも活用しながらお客さまの人生100年時代の資産形成を全力でサポートしていきたいと考えています。


刺さるパーパスこそが浸透の鍵


齊藤:DC証券は会社としてのパーパスを策定はされているのでしょうか?


酒井さん:当社のパーパスは、今のところミッション・ビジョンという整理になっていて、「確定拠出年金を軸に、ライフステージを通じた資産形成を、熱意と工夫でサポートし、豊かで明るい未来の実現に貢献します」というものです。そして、この実現に向けて大切にすべきバリューを「チャレンジ・スピード・チームワーク」として定めています。



 

齊藤:こちらは酒井さんが着任される前に定められていたものですか?

酒井さん:はい。当時の経営層と社員で何度も議論して決定したと聞いています。なのでこのパーパス(ミッション・ビジョン)も社員にかなり浸透しています。また、まもなく次期中期経営計画の策定が始まります。そして、DC証券は1999年創立で来年25周年を迎えますので、この節目にあわせて改めて全員で想いを整理していきたいと思っています。

齊藤:理念やパーパスを改定するタイミングとしては、中期経営計画や周年は取り組みやすいですね。SMOにも周年でのご相談を多くいただきます。



MYパーパスと会社のパーパスを重ね合わせる方法 


齊藤:ところでMYパーパスと会社のパーパスを重ね合わせる取り組みについては、どのようなプロセスがあるのでしょうか。


酒井さん:まずMYパーパスについては「want・must・can」の観点から、元々持っている自分の価値観や大事にしているものを丁寧に洗い出しながら整理していきます。そのうえで、SOMPOのパーパスやDC証券のパーパスの重なりを考えるようなプロセスになっています。


齊藤:体系化されていて、素晴らしいですね。MYパーパスを掘り下げて重ね合わせる取り組みは、ぜひ参考にさせていただきたいです。


酒井さん:実際に御社がクライアントとパーパスを作るまでは、どういう風に取り組んでいるのですか?


齊藤:SMOでパーパス策定のお手伝いをする時も、まずは経営層や関係者へのインタビューでその会社の大事にしていることや、個人的に大事にされていることなどを入念に聞き込みます。その後のやり方はさまざまですが、お勧めしているのは、社員の巻き込み、経営者から若手の方までを巻き込んで進める方法です。特に次世代のリーダー層を入れることを提案しています。巻き込んでいくことで皆が同じ方向に向けるし、腹落ちもするし、浸透もする。皆を巻き込んでワークショップをやる形をお勧めしています。 



「なぜそれをやっているのか」を置き去りにしない


齊藤:いま世の中では「人的資本経営」と言われていますが、以前から取り組まれている酒井さんからみて、日本企業に必要だと思われることは何でしょう?

酒井さん:私たちがビジネスをやる上で基盤となるのは、「人」だということは間違いありません。ただ、今バズワード化している「人的資本に関する情報開示」という話には、やや危うさも含んでいると思っています。この数値目標を満たせばいいとか、この情報を開示すればいいといったことに囚われてしまい「そもそも何のためにやっているのか」ということが置き去りになってしまわないようにしなくてはなりません。「手段」が目的化してはいけないということです。


齊藤:本当にそうですね。パーパスの概念そのものが「何のためにやるか」に立ち戻る、これって当たり前のようですが、意外と見失いがちですよね。


酒井さん:サステナビリティの推進もそうですね。SDGsの17の項目にどう対応しているか整理するといったように、「見せるため」の取組にならないようにしないといけないと思います。もちろんSDGsに取り組まないよりは取り組んだ方がよいのですが、結果として社会がよい方向に変わっているか?人がいきいきと元気になっているか? それらがとても大事だと思うんですね。

また、よくD&Iが大切だといいますよね。最近ではDE&I((Diversity Equity&Inclusion)ともいったりしますが、多様性(Diversity)があるだけにとどまらず、それぞれの強みを発揮していきいきとやりがいをもって働くことができる、包摂(Inclusion)がある組織や風土づくりが必要です。むしろ「D」よりも「I」が大切なのではないかとも感じています。



差別意識やマイナス意識はもたない


齊藤:内閣府でも女性活躍推進に尽力されていたとおっしゃいました。働くキャリア女性として、素敵でかっこいいなと思っているのですが、苦労されたこと、心がけていたことはありますか?

酒井さん:新卒で入社し、転勤で広島に行きましたが、当時は損保会社の女性営業職員はほとんどいなかったので、お客さまから「女じゃだめだ、男を出せ」と言われるなんてことはありました。でも、「そうか、男を出せばいいのか」と(笑)。どうしてそんなことを言うのだろうとは思いましたが、自分で変えられないことで悩んでも仕方ないですし、真摯に誠実に対応していればお客さまも私ときちんと向き合ってくださいました。自身の受け止めとそのあとの行動で変わってくることも多いと思います。



それに今は、男女だけにとどまらず多様な価値観が求められる時代になってきました。内閣府に出向した時も「民間の視点でどんどん意見をいってほしい」とよく言われましたし、社内でも保険会社の「当たり前」を打破するような、違う視座の意見が求められていることを強く感じます。だから「自分が知らない、経験がない、だから意見を言わない」ではなく、自分が知っていることで貢献できる、新しい価値提供ができるって考えられるようになればいいなと思います。

 

齊藤:すごくポジティブで、素敵ですね。知らない、できない、差別されてる、そういうマイナス意識を持たずにプラス転換してできることを貢献していけば良いのですね。本日はありがとうございました。


 


酒井香世子

損保ジャパンDC株式会社 代表取締役社長


1992年に安田火災海上保険(現:損害保険ジャパン)に入社し、広島での営業やサステナビリティ部門の前身である地球環境室、広報部門等を経て2014年から2年間内閣府男女共同参画局へ出向。アベノミクスの成長戦略の一丁目一番地として女性活躍が掲げられ、女性活躍推進法の策定が進められる中、政府の中からそのムーブメントを体感。その後、人事部や秘書部社長オフィス、内部監査部などを経て、2020年4月取締役執行役員、2022年4月取締役常務執行役員CHRO・CSuO。2023年4月から現職。



 

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