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「人」と「パーパス」が起こす力 (1) Woke Capitalism、そして本物の企業

更新日:2月27日

20世紀初頭から唱えられていた「Woke」


芸名”Lead Belly”として知られるアフリカ系アメリカ人、 Huddle Ledbetterは、1900年代初頭にギター、ピアノ、ハーモニカ、バイオリンなど多くの楽器を器用に操り、女性、酒、刑務所生活、人種差別などの社会問題を歌い上げたフォーク・ミュージシャンだった。


1938年、彼は「スコッツボロ・ボーイズ」という曲を発表した。この曲は、2人の女性への強姦罪容疑をかけられた、無罪の黒人青年9人の物語を歌ったものである。この曲の終盤の歌詞には "皆へ忠げる。「woke」であれ。つまり、目を見開いて警戒しておけということだ。”というくだりがある。


これは、アフリカ系アメリカ人に、人種差別的脅迫への注意を促す言葉だった。そこから、この言葉はしばらく覚醒をしないまま、21世紀に入る。


今日の "Woke "の意味


21世紀は2010年代に入り、Black Lives Matter運動やソーシャルメディアの登場により、「woke」という言葉が知られるようになる。#StayWokeというハッシュタグが生まれ、ミレニアル世代のボキャブラリーの一部となり、その意味は進化し続けている。今日では、「woke」の対象範囲は人種的差別の域を越えて広がり、辞書では次のように定義されている。


 社会における重要事実や社会問題を認識し、能動的に注意を払うこと。


つまり、「woke」であることは、政治的・文化的な意味での支配パラダイムを意識し、そこに疑問を持つということである。


Woke Capitalismの登場


今日の消費者は、かつてないほど 「woke」である。製品やサービスの機能性だけでなく、それらが私たちのコミュニティや地球に与える影響も考えて購入している。それは、製品がどこでどのように作られたか、サービスを提供するスタッフがどのように扱われているか、自分の買い物が世の中のためになるかどうかというようなことである。


企業もこうした変化に着目し、このような若い世代向けに、彼らの進んだ考え方や信念に刺さるプログラムを提供するなど、上手く利用するケースもある。さらに大きなレベルでは、本意であるかどうかに関わらず、若い世代の活動や価値観を支援することで、社会的地位や影響力を得ている企業も存在する。これが、ニューヨークタイムズの記者、ロス・ドゥシャットのいうところの「Woke Capitalism」と呼ばれるものである。


2020年に白人警官に殺されたアフリカ系アメリカ人、ジョージ・フロイドの事件で、社会的差別を訴える抗議運動が世界中で巻き起こり、企業はすぐに立ち上がった。ところが、黒人の生活と人権を支援するメッセージを発信した某大手スポーツメーカーは、中国の工場でウイグル人を強制労働させていたことが伝えられるなどの矛盾が生じた。


企業の言行が不一致であるという矛盾は、信憑性や誠意が疑われる。こうした派手なジェスチャーは、単なるWoke Capitalismに過ぎないのだろうか。


これまで以上に、企業は自社のパーパスについて、自分たちが何を信じているかを公に語るようになり、消費者は、多くの「言うだけ企業」に囲まれている。ノイズが溢れる中で、今日の消費者はかつてないほど疑り深くなっている。企業が消費者から信頼を得ることが極めて困難という、本当に世界を良くしたいと願っている企業にとってはマイナスな状況である。


では、消費者は、嘘つき企業をどう見極めたらいいのだろうか。真の善意の企業なのか、利益重視なのか?



偽りのない企業から学ぶこと


パンデミック発生時、パタゴニアは店舗の閉鎖を決定しつつも、従業員への給与支払いを続けた。アップルをはじめとして、同様の対応をして他にも賞賛された企業はあったが、パタゴニアのこの対応は今に驚くことではなかろう。パタゴニアには、つねに従業員を第一に考えてきた過去がある。CEOがその哲学を "Let My People Go Surfing "という本で発表しているとおり、同社は30年以上にわたり、事業所内保育を提供し、出張先ではベビーシッターを派遣して、子連れでの出張も可能にしている。抗議活動で社員が逮捕されようとも、その保釈金を会社が負担するなど、数え上げればきりがない。


パタゴニアのような企業は、従業員、地域社会、環境問題に対するコミットメントを、その行動によって、また時間を重ねて証明してきている。このような稀有な企業こそ、偽りのない企業と言える。SMOではこのような企業を「本物」と呼んでいる。


社会と環境のサステナビリティを中核に据えた「本物」の企業も稀ながら存在する。

これからパーパスドリブンとなり、本物を目指そうとしている企業に向け、それらの事例を紹介しよう。そこにはヒントと学びがある。



 

2000年代初頭、アメリカのスーパーの洗剤コーナーには似たような有害洗剤ばかり並ぶ中、カラフルでデザイン性の高い「MethodProducts(メソッド)」が登場した。安全な天然成分から作られた、ポップなこのラインは、マーケットのディスラプターとなった。同社では社員と顧客を「People Against Dirty(汚れと戦う人々)」と呼び、キャンペーンを展開した。“Dirty”という敵を明確に定義したことが、ファンを動かす要素となった重要なポイントだ。汚れと戦う人々である彼らにとってのclean upとは、家や体をきれい

にするだけでなく、掃除の仕方自体をきれいにすることでもあった。メソッドは、家をきれいにし、環境を良くすることを掲げて、社員とファンを1つにすることに成功し、ベルギーの環境消費財メーカーであるエコベールによって、2012年に買収された。



毎年春になると、あるアイスクリームチェーンの前に、人々が列を作る日がある。音楽やエンターテインメントを楽しみながら、人々は無料のアイスクリームコーンを求めて並ぶ。この "無料コーンDAY "を提供するベン&ジェリーは、40年前から毎年、このイベントを開催している。

この取り組みは有名でも、ベン&ジェリーが各地域のチャリティ団体と提携し、社会貢献のための募金活動を行っていることはあまり知られていないかもしれない。例えば、シンガポールのある店舗では、無料コーンDAYに、放置または虐待されている子どもたちを支援するチャリティーへの寄付を呼びかけた。

無料コーンDAYは、現在のアプリによくあるフリーミアムビジネスモデルと似ているが、フリーミアムのゴールは課金であるのに対し、無料コーンDAYのゴールは社会貢献である。新規客の獲得、ロイヤルカスタマーへの感謝、コミュニティ向上、そして社会貢献への応用まで、このようなモダンな方法が随分前から実践されていたことは実に驚くものだ。



Warby Parkerは、人々がメガネを簡単に、楽しく、そして手頃な価格で購入できるよう、DtoCのスタートアップ企業の先駆けとして始まった。

世界中で眼鏡を必要としているにも関わらず手に入れることができない人が、世界中に25億人も存在する。彼らはこの事実を認識し、誰もに見る権利があるべきだという信念がある。そこで、ビジネスモデルにソーシャルプログラムを組み込み、1つのメガネを購入で、メガネを必要としている人にメガネが1つ贈られるようにした。 Warby Parkerは今日までに、発展途上国市場、新興国市場で1000万個以上の眼鏡を贈呈している。顧客は、困っている人が学び、働くための支援をすることができるのである。

2021年には上場、その成功は、消費者にとっての「価値」が変化したということを裏付ける。消費者は、自分のだけために素晴らしい製品を求めるのではなく、良いことをすることにも価値を見出しているのだ。



 

こうした事例のように、「人々が集まり、彼らを動かす」ことこそが、大きな変化を起こすことができる。いわば「ムーブメントを起こす」ということだ。では、そこに必要不可欠な重要要素はなんだろうか?






<こちらの記事は、SMOタブロイド誌「TOKYO 2023」からの抜粋です。


タブロイド誌全編及び最新版の全編は、こちらよりダウンロードいただけます>



引用

“Woke Corporate Capitalism.” The Heritage Foundation, https://www.heritage.org/progressivism/heritage-explains/woke-corporate-capitalism.

If We Want More Companies like Patagonia, We Need Laws to Enforce It. https://www.fastcompany.com/90560496/patagonia-ben-jerry-bcorp-woke-capitalism.

“Method.” Odysseus Arms, https://www.o-arms.com/vault-method.

"Marketplace 2009/Corporate Profiles; Method Products Inc." Chain Drug Review, https://www.thefreelibrary.com/Chain+Drug+Review/2009/June/29-p54860.

"About." Method, https://methodproducts.com.

Kurtz, Rod. “A Soap Maker Sought Compatibility in a Merger Partner.” The New York Times, The New York Times, 16 Jan. 2013, https://www.nytimes.com/2013/01/17/business/smallbusiness/a-founder-of-the-soap-maker-method-discusses-its-sale.html.

Tay, Reuel Eugene. “I Heart Ben & Jerry's Free Cone Day!” City News, https://www.citynews.sg/2009/04/30/i-heart-ben-jerrys-free-cone-day/.

“About Ben & Jerry's.” Ben & Jerry's, https://www.benjerry.com/about-us

“History.” Warby Parker, https://www.warbyparker.com/history.






 


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