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日本初?のパーパス実践企業になってみた

更新日:4月25日

SMOのパーパス・ブランディング案件の第一号は、コンビさんでした。

当時、まだ全く一般的でなかったパーパスの概念を導入した立役者の小堀英次氏は、昨年社長に就任。「子育てに、イノベーションを。」をブランド・パーパス・ステートメントとして掲げるコンビのその後、そしてこれからについてお聞きしました。


(インタビュー:SMO 青山 永、ジャスティン・リー)

 


青山:私たちがご一緒したのが2014年頃ですよね。今でこそパーパスってメディアでも取り沙汰されていますが、当時パーパスはほとんど知られておらず、なんの意味があるのという時代でしたが、小堀さんはそこで反応されて。コンビさんは日本企業の中でも初のパーパス策定企業だったのではないでしょうか?


小堀さん:それまではなかったですもんね。だからこそ、SMOがやろうと言ってくれたんですね。


青山:それに乗る小堀さんもすごいと思います。その頃パーパスと検索しても出てくる会社はなかったですし。コンビさんも当時からきちんとブランドバリュー、ミッション、ビジョンなど制定されたものがあった中で、パーパス的な概念の導入をしてみようと思われたのは、何かに突き動かされたからなんでしょうか?


小堀さん:創業の精神を忘れかけているのではというのをひしひしと感じていて、

それを立ち返らせるために、SMOさんにご紹介頂いたパーパスがすごく刺さると思ったので一緒に作らせて頂きました。今年創業65年ですが、おまるが一般家庭に普及していない創業当時にプラスチック技術を駆使して、スワンのキャラクターをモチーフにしたものを

市場に出したり、手押し車が主流だった時に、最軽量ベビーカーを投入したりと、時代に

先駆けた新しい商品を提案し続けてきたという歴史があったんです。それが、競合他社とのスペック競争に陥って、本当にお客様が求めているものへの洞察力が不足していった。今までやってきたことはそうじゃなかったでしょ、と。そこでパーパスの存在に着目して、立ち返ってマインドリセットしようということになりました。


青山:創業時の想いをきちんと掘り起こすということですね。良い商品を作り、よりイノベーティブになるにはどうしたらいいのかという経営上の大きな課題があったわけですね。

そこから、自社の歴史や、そもそもなぜこの事業をスタートし、どういうところに自分たちの想いや情熱があるのか、お客様から何を求められているか、などの議論を重ねて、最終的に出てきたのが「子育てに、イノべーションを。(Innovating Baby Care)」でした。


もともとのミッション、ビジョン、

バリューに加え、さらに自分たちを端的に示す言葉としてのパーパスという概念を取り入れたということで、パーパスブックも一緒に作らせていただきました。







小堀さん:ブランドステートメントっていうのは昔からあって、いくつか変遷があったんですが、「子育てに、イノベーションを。」にする前は「愛する気持ちを支えたい」。当時の人たちの報智を結集して作ったものですが、時代が変わるとともにあまり刺さらなくなってきて。グローバルメンバーからも愛というのは意味が広すぎてあまりしっくりこない、もうちょっと具体的にしたステートメントが欲しいという声が出ていたんです。

すでにあったビジョン、ミッション、バリューの中にパーパスを取り入れるのは無理があるから、これまでブランドステートメントだったものからブランドパーパス・ステートメントという位置付けにして、三つの三角形を一番束ねるワードとして採用したわけです。このパーパス文言は企業ロゴの下に付いています。


ジャスティン:パーパスを作る過程で印象的なことはありましたか?


小堀さん:温故知新一古いものを大切にしながら新しい知識を導く、まさにその感じを受けました。ワークショップをする中で、コンビって実はイノベーションを起こしてきたんだと、昔の商品も紐解きながら原点を振り返ったのがすごく大きかったと思います。我々が、なぜ今ここに、なんのためにいるのかっていうのは、急にできた会社ではなくて、歴史があり、色々なことがあってその延長戦上にいるわけであって、参考になり、原動力にもなっていますよ。


ジャスティン:英語だとHeritageという言葉ですね。そこをちゃんと探ったということですね。


小堀さん:ワークショップは私を含めた社員3人でやりました。本当はもっと多くの人とやって色々な意見が入った方が良いという面もあるかと思うんですけれど、パーパスって何なんだという説明から入っちゃうと先に進まないのでとにかくやってしまえと。採用ワードや

考え方、ミュージックや動画も、コアの3人だけで知恵を絞ってやったというのが当時ではベストチョイスだったと思っています。広げすぎるとまとまらないとか薄まったり丸まったりすることもあるし、多少尖った位の方が良いんじゃないかなと。


青山:会社の存在意義(パーパス)を決めるという全社的で大きい事柄を少人数でやってしまおうというのは結構なチャレンジかと思いますが、会社に事後承認させるという過程は相当大変だったのではないでしょうか。


小堀さん:当時の社内体制が大きく影響しますね。その頃グローバル化も進めていましたが、ブランドに関するグループのコントロールヘッドクオーターが日本にあったんです。私に任せて欲しいと事前に取り付けつつ、動いているよと途中、説明も入れながらやっていました。今のブランド委員会は香港に移管されたため時間もかかるでしょうし、ここまで尖ったものはできていないと思います。あの当時、あの体制だったからできたと思います。

企業の最大価値って、ブランド価値なんですよ。そのブランド価値に対しての話がパーパスであり、一番重要なので、確かにいろんな方面で議論しなきゃいけないし、時間もかかるけど、そこを適当にやっちゃうと大変なことになる。


青山:では、小堀さんが考える「強いブランド」とはどういうブランドだと思いますか?


小堀さん:愛されているかどうか。別のワードでいうとファンになるということだと思います。ベビーカーやチャイルドシートを買う人が、多少のスペックや価格の差ではなく、コンビが大好きだから、ベビーカーを買う前からコンビに決まっているという状態にならなければいけないし、実際にそういう活動もしていかなければいけない。企業を継続していくためにそこがポイントになるんじゃないかと思います。現在の経営方針「感動創造」もそこに繋がるんですけれどね。


青山:小堀さんが21年に社長になられた時にこの「感動創造」を制定されたということですが、詳しく教えていただけますか?


小堀さん:経営方針として、「感動創造ナンバーワン企業になる」というのを掲げました。ニーズではなくインサイト、顕在意識ではなく潜在意識。海面に出ている5%くらいの顕在ニーズに対して海の下には95%の潜在意識があって、我々自身気づいていないですが、意思決定にはそこに重要な要素がある。こんな物欲しいという見えるニーズは、もう満ち足りていて、スペック合戦はそこでせめぎ合っているんですが、そうじゃなくて、本質的に求めているものを突き止めてお届けしたい、満足レベルではなく感動レベルにしたいという意味での感動創造なんです。


コンビが評価されていくためには感動に満ちたサービスと商品を提供し続ける。そのためには社員自身が感動する人たちになっていないと、ということで、感動投稿コンテストっていうインターナルの取り組みをやっているんです。映画を観て感動した、雨上がりの虹が綺麗だったとか、この前のオリンピックとかも。そういう潜在意識を呼び起こす必要があると思って、自ら感動したことをなんでもいいからイントラネットにどんどん投稿し、

それに対していいね!もつけて、その月のいいね数最多がMVPを取るんです。

風土を変えるためのこの活動ですが、副産物もあって、このコロナ禍でリモートワークが増えて、コミュニケーションの場が減った中で、この人こんなことしていたんだ、こんな趣味があったんだと、コミュニケーションのきっかけ・活性化の場にもなりました。活性化したら、今度は感動創造し、インサイトを発掘して提供していかなければいけない。そういう感動マインドが、開発の人間なら物作りを実際に具現化したり、サービスなら接客のやり方も変わるし、色々な取引先への対応も、コンビにくるとなんか気持ちいいねってなってほしいし。社員同士もみんなが喜んでやるよってなったら素敵だなと。現に少しずつそういう風土が出てきています。


青山:パーパスを導入する企業が増えてきて、なかなかうまく導入できない企業も多くある中で、こうしたらいい、こんなことだったらやらない方がいいなど、早い時からパーパスに注目されて今日まで実践されてきた小堀さんならではのアドバイスはありますか?


小堀さん:言われたからやるとか流行っているからやるならやめた方がいいですね。

問題意識を元々持っていて、それを解決するためにパーパスっていいじゃないと思うならやったほうがいい。そこがないならやめた方がいい。


ジャスティン:子育てに、イノベーションを。というパーパスができてから今日まで、どのように風土が変わり、パーパスが浸透してきたかをお聞きしたいです。


小堀さん:お望みの答えではないと思いますが、実はまだ浸透していないです。みんなが腹に落ちて一回完全に理解して、パーパスの重要度を本当にわかっていたつもりなのですが、それを業務に活かそうとはなっていなかった。1回2回じゃ浸透するはずがないんですよ。継続が大事で、絶えず色々なところにリマインドしながら徐々に。風土のようなものじゃないですか。どこの会社も課題なんでしょうけれど人が変わると変わっちゃう。

「子育てに、イノベーションを。」の文言は残っていますが、実は当時で一度途切れてしまった。私の部署が変わって、浸透活動が止まっちゃったんですよ。でも私の問題意識は変わっていないので、今までよりは推進、浸透させやすいなと思っています。今回社長に就任してわざわざ感動創造と掲げたのも、できてないから掲げるんです。できていれば次の段階

に行っているはずですから。


青山:究極的なトップ、社長である小堀さんが、一貫して脈々とそこに取り組まれて、コンビさんはまさに実践されているんだなと思います。最後に、「感動」についてですが、小堀さんが最近で一番感動したものはなんですか?


小堀さん:最近じゃないかもしれないですが「鬼滅の刃」ですね。映画好き史上ナンバーワンレベル。

東洋思想の80歳の師匠いわく、「人間の本質そのものがコンセプトになっているから感動しないわけがない。仁義礼智信(=徳)が鬼滅の刃の中には全部入っている」と。ビジネスも一緒で、人と人だから。このベビーカーはあっちより何百グラム軽いんですよ、じゃなくて、コンビは育児を全力で応援します!困ったことがあれば解決のお手伝いをします!という姿勢が伝われば良いブランドになるし、コンビが大好きでコンビを買うことは決まっているという状態になる。お客様もより良い生活が送れるし、本質的な選択ができるようになる。


青山:その原点に7年前のパーパスが繋がっている。他では聞くことができない貴重なお話を、ありがとうございました。


 

小堀英次(こぼり・えいじ)

コンビ株式会社代表取締社長 昭和64年3月筑波大学第二学群日本語

日本文化学類卒業後、2社を経験し、平成4年(1992)8月、コンビ株式会社入社。

営業・マーケティング・開発・ロジスティクス・グローバル・経営企画など幅広く経験し発展に貢献。プランドステートメント「子育てに、イノベーションを。(InnovatingBabyCare)」策定を主導。

令和3年(2021)1月コンビ株式会社代表取締役社長に就任。