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逆行発想。多様な選択肢が社会を安定させる。


2021年4月、創業20年の節目にあらたにパーパスを策定したセブン銀行。創業時の「コンビニにATMがあったらいいな」のお客さまの想いを変わらず受け継ぎながら、変わり続ける次世代の銀行としての、これまでとこれからを舟竹社長にお話を伺いました。


(インタビュー:SMO 齊藤 三希子)


 




齊藤:セブン銀行さんは2021年にパーパスを策定されて、まさに強いブランド に向かう過程にあると思いますが、舟竹さんが入社された時のブランドイメージはどんなものでしたか?


舟竹さん:当時はアイワイバンク銀行という名前でした。「銀行」ではあるがコンビニのATM運営をする会社というイメージですね。ただ、日本で21世紀初の銀行でもあり「新しいことをどんどんやっていく銀行なんだろうな」というイメージもありました。


齊藤:お客様からは、今も新しい銀行というイメージを持たれてるのでしょうか?


舟竹さん:社外の方からは「銀行の中でも新しいことへの挑戦や、色んなことやってますよね」と言われることは多くて、とてもありがたいのですが、一方で「言われるほどじゃないかもしれない。」という感じは持っています。20年経って社内全体に閉塞感や停滞感が漂い、創業時に比べて会社の活力が少し落ちてきているのではないかと心配しています。


齊藤:色々新しいチャレンジをされているということですが、具体的にはどういうことを?


舟竹さん:1つは、デジタル社会の中でATMをリアルとの接点の多機能端末にしようとしています。例えば、マイナンバーカードを健康保険証として利用するための申し込みを可能にしました。ATMの高性能力メラを使った顔認証による本人確認も実験中です。ATMの機能を活用して、行政や医療のデジタル化に対応していきたいと考えています。現在は様々な取引がスマホでできますが、スマホでしか取引できないとしたらお困りになる人も大勢いるはずです。スマホ以外にも取引の選択肢があることが大事だということを社会に示したい。それが、サービス自体の安心感や安全性にもなるし、ひいては安心、安全な社会をつくることに繋がるのだと思います。


齊藤:仮想世界よりも、リアル世界での選択肢ということですよね。


舟竹さん:そうですね。時代と逆行しているように思われるかもしれませんが、皆が進む方向と違った方向を目指す者がいてもいいのではないか。スマホでできる取引を全てATMで実現するくらいの発想でやってみたいと考えています。


齊藤:そんな中、なぜパーパスを策定しようと思われたのでしょうか?


舟竹さん:当社は、これまではATMによる現金ビジネスに専念してきましたが、環境が大きく変わる中、従来のビジネスだけで生き延びていけるのかという危機感は強く、時代の変化に対応し、「事業の多角化」を進めて行かなければと感じています。これまでの発想にとらわれない様々なチャレンジをしていくことになりますが、そんな状況の時こそ、いついかなる局面でも、失ってはいけない芯や、発想の軸、判断の基準になるような理念が必要になるのでは、と思い、パーパスの策定を進めていくことになりました。


齊藤:それまでも新しいチャレンジを色々されたと思いますが、パーパスを策定して、それに基づいて判断や行動をされていたりしますか?


舟竹さん:意識的にそうしています。実は今、当社の経営会議の場に(架空の)「お客さま席」を作っています。お客さまに常に見られていることを意識し、お客さまの満足を超えるサービスかどうか、をみんなで確認し合って議論するようにしています。

つい最近の経営会議でも、新たなサービスの開発や既存事業の見直しについて最終判断を行う局面がありました。いろんな人を巻き込み丁寧に検討を重ねてきたものではありましたが、お客さまの期待を超えられるという確信が持てず、一旦白紙に戻し、再検討を指示しました。これもパーパスに基づいた判断といえるでしょうか。


齊藤:そこには拠り所としてのパーパスがあったんですね。そういうことがきっと新しいことをやり続けるブランドとして認知されているんでしょうね。


舟竹さん:まだまだこれから浸透させる必要があると思いますが、振り返ってみれば、当社がATMを通じて提供しているサービスは日本初の革新的なものがほとんどです。そう思うと、今回のパーパスにつながる判断軸はこれまでも働いてきていたのだと感じます。


齊藤:これから、金融業界、セブン銀行を取り巻く環境というのはどうなっていくと思いますか?


舟竹さん:銀行がこれから生き延びていくためには、巨大になっているか、小さくても優れた独自1生をもっていないと生きていけないんじゃ ないかなと思っています。我が社は、おそらくその後者として、ATM\あるいはATM以外でも独自生を持った新たなビジネスをいくつか 作って生き延びていかなければならないんだろうなあと思います。 従来のATMとは違う世界「ATMプラス(+)」と言っているんですが、 プラスがいくつか具体化しているような世界を創り上げたいと思っています。


齊藤:特徴を出してお客様から選ばれる存在でいるという、まさに ブランドですよね。



舟竹さん:セブンーイレブン創業者(現、セブン&アイ・ホールディングス 名誉顧問)の鈴木さんは、いつも「世の中がやっていない新しいもの を作っていきなさい」と言っておられました。2001年には、お客さまから 「コンビ二でお金がおろせたらいいな」という声があって、今のATM 事業が始まったのですが、鈴木さんは「キャッシュレス化の中でお 客さまが必要としていないなら、ATMにこだわらなくていいんじゃな いの」とも言われます。常に新しいものを、お客さまから驚きをもって 迎え入れてもらえるようなものをずっと作り続けていくのがサービス 提供者だと言うことですね。その通りだなと思います。




齊藤:新しいものへの挑戦というのはセブン銀行だけではなく、セブン &アイ・グループ全体にDNAとして刻まれているわけですね。以前、 コンビ二業界の方にお話を聞いたときに、セブンイレブンは一周じゃ なくて二周先くらいを行っているとおっしゃっていました。


舟竹さん:その通りだと思いますね。経営者のやることは「現状に慢心 するな。」と言い続けることなんだと思います。私もこれまでのATM 事業で築き上げたものに慢心せずに、常に新しい価値を作り出そう と言っています。でも、そのような発言が新規事業をしている人だけ が評価されるようにも聞こえてしまいますが、毎日地道に業務に取り組んでいる人が会社を支えているんです。その人たちには毎日 同じことをちゃんと行うこともすごく大事。しかし、その中でも時代遅れになったものは整理して、大掃除しながらやってくれと伝えて います。


齊藤:その改革の先にあるセブン銀行の社内の姿はどういうことを目指されていますか?


舟竹さん:これまで高度成長の日本では、会社に来るといろんな便利な道具があって、家庭よりも先行していました。机もパソコンもプリンターも文房具も会社の方が良かったですね。ところがある時から自宅やプライベートな生活の方が技術的には進化しているんです。 だから、今私が言ってるのは、みんなが自宅でスマホでしていることを、 会社でもできるようにしようということです。

齊藤:会社に来ても来なくてもどこでもいいということでしょうか?


舟竹さん:ワークスタイル改革の中で、場所にとらわれない働き方ができるように、今は出勤しなさいとか在宅しなさいとか一切言っていないんです。でも、あまり在宅だけになっていると、知の探索がなかなかできない ので、この辺をどうやっていくかも難しいですね。社内の中でも、外とのコミュニケーションも、意識的に何かやっていかないといけないなと思います。


齊藤:実際舟竹さんが知の探索とか新しいものへの接点として個人 的に実行されていることはありますか?


舟竹さん:単純ですけど、本を読むことですね。それから人との出会いをできるだけ作るようにしています。特に若い人には、好奇心を 持っていろんな人と出会い、いろんな本を読んで、新しい知を探索していって欲しいですね。


齊藤:セブン銀行さんの社員の方は、好奇心や想像力ある方が多いのではないですか?


舟竹さん:真面目で大人しい人が多いかもしれません。僕からするともう少し好奇心や想像力を持ってほしいなあと感じます。

その中でもセブン・ラボという組織は、どちらかと言えば好奇心や想像力に溢れた人たちを集めてきて、外へどんどん出ていってもらって います。ここで実験的にやらせている分には面白いのですが、実際の業務にするとなると、リスク管理や事務手続き面等からの制約を受けて、いろんなところで角が落とされだんだん丸くなって、変哲もないものになってしまうことが多いんです。そこが難しいですね。


齊藤:銀行法という法律の壁もありますよね。GoogleやAppleとか が多分今後、金融業界に入ってくるじゃないですか。技術的には 入ってこれそうだけど、日本の法律の壁を突破できるのかどうか、 舟竹さんから見てどうでしょうか?


舟竹さん:日本では、銀行でなければできない業務が少なくなってきました。銀行は法律上、預金業務と融資業務と為替業務の3つを固有業務としています。ところが、これらは、銀行業じゃなくてもできるようになってきたんです。唯一、まだ銀行だけの特徴として守られているのは預金だけですね。 なので、銀行じゃないとできないことより、むしろ銀行免許を持っているがゆえにできないことの方が大きい。当社が旅行業やヘルスケアを 傘下に持とうということはできないけど楽天とかPayPayは可能です。


齊藤:セブン銀行さんは、今後、全然違う異業種とのコラボレーションなどの可能性はありそうですか?


舟竹さん:ある意味で、ずっとコラボしてきています。我々のATMと いうのはPayPayやpring(プリン)やメルペイなどの電子マネーの チャージ拠点・出金拠点としてなくてはならない存在になっていま す。それからATMプラスの世界では、お金の入出金を伴わない便利」なチャネルとしてのATM活用を考えています。さきほど話した本 人確認をATMで出来るようにするなどの取り組みがそのことです。 最近、リサイクルとかリユースがどんどん広がっていますけれども、 最終的に本人確認をしないとその買取品のお支払いができないんです。そういった本人確認をオンラインでやっているところは多いんですけど、ATMに行って、マイナンバーカードと顔を見れば、「はい。 あなたでしたね。大丈夫です。お金送っておきます」みたいな形になると便利なんじゃないかと思います。

また、ホテルの宿泊時のチェックインをATMで事前に行うことで、顔認証による自動チェックインができるサービスも実験的に開始しました。


齊藤:まさにインフラですね。デジタルの入り口をリアルに作る。


舟竹さん:そうなんです。やろうと思ったら全ての取引はスマホでできるかもしれません。だけど、スマホでしかできないという社会よりは、多様な選択肢が用意されている方が人や社会は安定するんじゃないかと思うのです。まだまだスマホに貫れていない人もたくさんいらっしゃいます。また、スマホに慣れている人でも、自分の都合に合わせてスマホとATMを使い分ける、それを自分で決められる、ということが 大事なんだと思います。

多様なものがあって、どれでもいいですよという選択肢が用意されている方が社会全体を安定させ、人は安心して利用できるんだと、私はそう思います。


齊藤:最後に、舟竹さんが考える未来に伝えたい「本物」は何でしょうか。


舟竹さん:やっぱり「人の真似をしてない」っていうのが本物だと思います。二番煎じじゃなく、ユニークで、自分達で作り上げてくるとか、 他にはない物っていうのが本物なんじゃないかなと。そういう意味 では、セブン銀行は常にその本物を作ってきたと思います。今後も、「お客さまのあったらいいな」を超えて、他が真似できないユニークなものを作っていくということにずっと取り組んでいきたいと思います。

 

舟竹 泰昭

株式会社セブン銀行 代表取締役社長


1980年4月、株式会社日本長期信用銀行(現株式会社新生銀 行)入行。2001年12月、株式会社セブン銀行入社。事業開発部 長、業務開発部長、執行役員等を経て、2018年6月代表取締役 社長就任、現任。座右の銘は「人生は敗者復活戦」。負けた時に何を学ぶかが大事だと考えている。趣味は散歩や水泳、ホットヨガなど体を動かすこと。