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執筆者の写真smo inc

パーパスは決めただけでは意味がない。パーパス策定後、日本連合警備が取り組む浸透施策とは?

更新日:2023年3月7日

1969年、山梨県で初めての警備会社として発足した日本連合警備。2019年9月に創業50周年を迎えた際にSMOと共にパーパスを策定。パーパス主導で動く自立した組織になるために、これまで取り組んで来たこと、そしてこれからやろうとしていることを、若くして大きなビジョンを持って変革に向けて乗り出す保坂東吾社長と、社内パーパスチームの丹羽さん、小林さんにお聞きしました。


(インタビュー:SMO 宮内 春子)


 


宮内:パーパスが策定されて3年経つのですが、久々に甲府のこちら本社に伺って、入口のこのスペースも素敵になっていて驚きました。警備会社という冷たい感じのイメージを一掃して、雰囲気的にも入りやすい感じです。 

 



保坂さん:お客さんが一番驚くよね。


丹羽さん:今までは来た人や警備員さんと「ちょっといいですか」って言って外で話してたのを、このスペースができてからはここでコミュニケーションとかしていて、リラックスできます。すごくいいですね。


宮内:さて、まずは振り返りも兼ねて、パーパス作成を確定されたきっかけを今一度お伺いしたいです。


保坂さん:きっかけは会社の創業50周年ですね。僕の中で次の50年は警備会社っていうキーワードではないと思っていて、僕が目指してる会社のイメージを言葉にして、会社の意義の文言策定をしたい、というところからスタートしました。ここはやっぱり全員を巻き込んでいかないと、策定しても「社長が単純に決めただけだな」で終わっちゃうので、パーパスが主導になって動くように自立した組織にしたい、と。



宮内:パーパスを策定してからその後、浸透についてはどのように行っていますか?


保坂さん:まずパーパス策定後、パーパスブックを作ってみんなに配りました(上画像)。そして、作っただけだと結局浸透しないってことで、パーパスを浸透させるためのパーパスチームを作ったんです。今日同席している社員もパーパスチームのメンバーで、丹羽は警備部の代表として、小林が営業からの参加ですね。具体的には、僕が毎週「 5 つの力」というのを元に朝礼で喋った動画を配信し続けました。今までは僕が言ったことも、上司が現場の社員と話す時に若干ニュアンスが変わったりしてたのが、動画を撮ったことによって、すごくわかりやすくなって良かったという声は聞いてます。




パーパスを実現する

5つの力; 

『気づく力』

『応える力』

『つながる力』

『変われる力』

『感謝する力』






丹羽さん:社長がわかりやすく喋るのは、社員にも響いたようです。


保坂さん:その動画が終わった後に、意識を変えるために、警備業と関係ない14個

のテーマについて考えてもらいました。それぞれ40人ぐらいいるチームを縦割りで4つ編成して、それについて僕と30分間面談する、っていうのをずっとやっていました。 


宮内:警備業関係じゃないというのは、具体的にどういうテーマでしょうか?


丹羽さん:山梨を盛り上げる、とか、若者が東京に全部出ちゃうのをどう防ぐか、とかですね。


保坂さん:「5つの力」の中でまず、「変われる力」を一番最初ににやろうと。変わらないと『気づく力』や『応える力』も無理なので、まず最終的なテーマとして「今の警備料金を倍にするにはどんな付加価値、価値を提案しないといけないか」があり、これに答えるための13個のテーマを作って、合計14個のテーマでプロジェクトの説明をしました。 


宮内:浸透度合いはいかがですか?


丹羽さん:その後の現場の一つの対応をとっても、お客さんにいかに寄り添った対応ができたかをみんなが考えるようになりました。今はまだ警備のことだけになりますけど、お客さんのハートをがっちりつかんで逃がさないようにしているかというテーマでの対応は明確になって、大きく変わった感じがしますね。これまでは、ただ警備に異常があったかなかったかだけで終わっていたのが、今は、なぜこれが起こったのか、もしかしたらうちがもっと助けられることがあるのでは?という視点で問題解決にあたるようになっている。それはパーパスを策定して、「変われる力」が徐々に浸透し、そこから「応える力」や、「気づく力」っていうのも徐々に養われてるのかなと。まだ序の口ではありますけどね。



パーパスの実現に向けた人事評価制度の再設計


保坂さん:パーパスは作るだけじゃ上手くいかないなと。結局それだけじゃ社員って大きく変わっていかないんで、去年1年間をかけて人事評価制度の再設計をしたんです。人事評価って定量と定性があるうち、定量の部分は 20%ぐらいしかない。ほとんど定性評価なので、その中にパーパスの 5 つの力の全部を細かく組み込んだんです。評価制度自体は今年の2月スタートするんですが、評価者 1人につき被評価者が4人位で、1対1でミーティングを半期で 20 回以上するので、毎週のように自分が定めた各項目の目標値にどれだけ近づいているかっていうのを確認するんです。そこまで仕組み化しないと、このパーパス の5 つの力は普段から重きを置けないんです。自分の働きが「5つの力」ではどうなって、どれがどう評価されてるっていう意識付けをやっと導入できますね。この制度で大きく変わるんじゃないかな。とはいえ、運用して定着するまでに 2 年ぐらいはかかるかなと思ってます。それくらい組織を変えるのって時間がかかりますね。 




宮内:やっぱり本気でパーパスを導入するかどうか、そこの違いなんじゃないかなと思います。作って終わりにならないようにというのが一番難しいところで、しかもずっと続いていくので、覚悟を決めて始めないと続けられないですよね。 


保坂さん:パーパスを作っても今までの企業理念と何も変わらないのだったら意味がないじゃないですか。 それを人事評価に落とし込んで、給与システムにも落とし込んで、それが回ってやっと初めてパーパスは定着するんじゃないかなと思います。


宮内:御社は拠点が多くて、職場にみんなが来るんじゃなくて、待機所に2人ずつ出社するような形で、そもそもコミュニケーションを取るのが難しく、さらに、一同に集まるのも難しいという課題がありました。そういう状況でどのように浸透施策を進めているのでしょうか。


小林さん:グループをさらに細分化して、監督する立場がそれぞれで話し合っています。あと、警備業は特殊で、定期的に教育をしなきゃいけない決まりがあって、今までの教育は教科書読んで、映像を見せて、テストして終わりだったんですけど、今はいろんな拠点で自分たちの問題点や課題をあげてもらって、それをグループで話し合っています。横の繋がりという意味でも、別の拠点でも同じ共通意識を持てるところ、参考にできるところを話し合ったり。 


宮内:他にも浸透のための施策で変えたものなどはありますか?


小林さん:制服を変えました。ちょっと細身になって、着こなしとかが綺麗になったんです。イメージはお客さんにとっても大事なので、そういう意味ではわかりやすく浸透したのではと思います。


丹羽さん:あと警備車両も新しくしましたね。 




パーパスを補完するロゴと、そこに込められた意味


宮内:警備車両にも入っていますが、この新しいロゴへの変更もSMOでお手伝いをしました。変更後の反響はいかがですか?


保坂さん:それまでは会社のロゴ自体に意味がなかったんですが、今のロゴは3つの意味を設けました。ブルーの盾部分は、「防ぐ・守る」。鷹のモチーフは、鷹の速さ、一目散で駆けつけるスピード。そして最後に鍵。カスタマーサクセスの鍵をうちの会社が見つけていきますよっていう、 3 つの意味。そういう会社なんだっていうことを説明できるのは大きいし、単純にお客さんからも、ロゴがかっこよくなったね、っていう評価を貰って、社員もこのマーク好きなんじゃないかな。




宮内:「カスタマーサクセス」っていうキーワードは、寄り添う以上に、さらに先の課題を解決しなきゃいけない、という意味を含めて制定したと思います。現状、このあたりは?


小林さん:お客様の困り事や課題って、アンテナ張ってないと吸い上げられないんでね。お客さんがおっしゃってるこういうこと、対応できませんか?というような声が集約されてやっと、課題解決になるわけですが、ポツポツ来るようになりましたね。


保坂さん:お客様の困りごと解決というところでは、お客さんとの「架け橋」と、「未来」をかけて、「架橋ミク」って名前で、最近キャラクターを作ったんです。これから、LINEスタンプとか作ったりしたくて、いま、先にキャラだけストーリー性を作っています。


宮内:それは社内公募で?


保坂さん:そうですね、社内から出たイラストの1つを選んで。でも他にも20作品ぐらい良い案がありました。


宮内:社内だけでそんなに力作が集まるのはすごいですね!


保坂さん:僕が「人が大事だから、人を使ったキャラを」と言って、最終的には2022年の4月入社の新入社員というストーリーになりました。架橋ミクちゃんが子供だった頃、おばあちゃんの実家に強盗が入った。それで将来おばあちゃんを守りたいということで、警備会社に就職した新卒の設定です。「課長・島耕作」みたいに毎年どんどん成長してくるストーリーを考えようと思っています。現状、お客さんからの困りごとの相談は、まだ僕がイメージしてるところまで来ていない。今まではそれやってもプラスにならなかったんですが、今後はそういう困りごとを自ら集めに行かないといけないっていう評価になってるんで、もっと自分でアクション起こすんです。何を評価されてるかっていうのはやっぱり最終的に大事で、それやってないなんて言ったらここの評価下がるよね、ってなってくると、じゃお客さんとこ行って困りごと聞かないといけない。ビックリするぐらい細かく評価を定めてるんです。


丹羽さん:細かいんですけど、難しくもない、本当に努力すればできる範囲、そういうレベルで設定してますね。まず、アクションを起こしてもらうっていう。何をすればいいかっていうのを自分なりに考えたり、チームで考えてもらう、そのための評価制度になっています。


保坂さん:パーパスをうちの会社で作ってから、パーパスっていうキーワードを初めて知った会社の経営者とかも多くいて、周りでもパーパスを導入したいって会社はあるんですが、作っただけじゃ絶対回らない、人事評価制度をここまで変えないと意味がないよっていう話をしています。



パーパス主導になるための今後の取り組み


宮内:そうですね、最近結構パーパスが流行りっぽくなってきて、ただ作りたいみたいな会社が多いのですが、作ればいいってもんじゃないっていうのは伝えていかなければならないところです。今後はパーパスチームはどのように稼働していくのでしょうか?

  

保坂さん:月1回定例会を行ってますが、2022年の1年間は人事制度改革の準備に使ってたので、今年は浸透の年ですね。個人評価制度の仕組み化が2月から始まると、今まであまり時間を取ってなかったところに、上司は今度部下を見る時間、育てる時間が強制的に入ってくる。今まで通り現場の仕事もやらないといけないので、じゃあどうこなせるかっていうのを見ないといけないんです。

 

丹羽さん:毎週面談をやってかないといけないんで、時間の使い方も含めて自分も変わっていかないといけない。とりあえずやってみてから問題点を洗い出して、それを解決して本当にちゃんと浸透していくようにしていかないとですね。間違っていたら軌道修正して。社内研修やその制度設計についてもまず仕組みを作っていく年ですね。


保坂さん:仕組みにしないと、社員一人一人が動いてくれないんですよね。末端まで動かないとダメですから。もとの理念やミッションを、パーパスっていうキーワードに変えただけになっちゃう。パーパス、存在意義ってなると、理解したのかなって思っちゃうんですが、仕事を評価しなかったら絶対人って動かない。人事評価制度を仕組み化して、どうやって毎週回していけるかっていうところまで落とし込めたら、会社は勝手に成長するはずだよって言ってるんです。そのフェーズになったら、僕は会社にいらないです。


宮内:社長がはやく楽になるように、そのフェーズまで行けると良いですよね(笑)。とはいえ、いろんな事業展開をされている保坂社長のことなので、その時はまた別のことに邁進されているのだろうなと思いました。次回はそうした多角展開事業の1つである、山梨拠点の和菓子のお店について、引き続き社長にインタビューをさせていただきますので、よろしくお願いします。


みなさん:ありがとうございました。






保坂 東吾(ほさか・とうご)

日本連合警備 株式会社 代表取締役


山梨県南アルプス市出身。上智大経済学部経済学科卒大学卒業後、東京の警備会社を経てIT系のベンチャー企業に入社。その後24歳で祖父が経営する日本連合警備に移り、警備業、営業職を積んだ後、ウェディング事業などの業績回復を担う。2014年、代表取締役に就任。







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