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  • 執筆者の写真smo inc

ダノンがパーパスをいかにビジネスに組み込んだか



アスペン研究所が2023年6月に開催したラウンドテーブルで、ダノンの米CEOのシェーン・グラントは、同社の経営において、彼らのパーパスをいかに重要な意思決定や戦略の指針としているのかを、事例を用いて紹介した。


パーパスはビジネス成長の起動エンジン

グラント氏は、同社のパーパスはビジネスそのものだと説明する。言い換えれば、そのパーパスには、「何を」、「どのように」、「どこで」販売するかを含むものである。パーパスはビジネスをどのように進化させるかを示すものでなければならない。今日のダノンの成長エンジンは、低糖質・無糖質、腸の健康、植物性、高タンパク質だが、これらは、「bringing health through food to as many people as possible(食を通じて多くの人々に健康をお届けする 」というパーパスに完全に一致している。ダノンのビジネスは、そのパーパスを実現しながら成長しているのである。


パーパスで判断する社会的責任

繰り返しになるが、ダノンのパーパスは、「bringing health through food to as many people as possible(食を通じて、できるだけ多くの人々に健康をもたらすこと)」である。ダノンは、このパーパスをもとに、社会的問題に関与するかを決定する。逆に言えば、ダノンのビジネスやパーパスに深く関係しない問題には踏み込まないと、グラント氏は説明する。


同社が踏み込んだ問題の一例に、コロナ禍での米国における乳児用粉ミルク不足での事例がある。当時、ダノンは乳児用粉ミルク事業でグローバル展開をしていたが、米国ではそれほど存在感を示せていなかった。パンデミック中に乳児用粉ミルク事業に参入するのは、ダノンにとって大きなリスクだったが、「健康」に関する問題であったため、同社は政府と小売業者の協力を得て、自社ブランド「 Aptamil」を200万個近く米国に輸入する決断をした。 グラント氏曰く、「このような大きな社会的タイミングで私たちが正しい決断を下して介入することが本当に重要であり、パーパスはこのような決断に大きい影響を与えるのだ。」と言う。


パーパスで判断するマーケット定義

上記の例は、ダノンが社会的イニシアチブを進めるにあたって、パーパスの「健康をもたらす」の部分をどのように使ったかというものであるが、ダノンはまた、「できるだけ多くの人々」という部分についても、指針として機能させている。


パーパスを戦略から実行につなげるためには、パーパスの意味をきちんと理解、解釈するということからすべてが始まる。ダノンにとって、それは「できるだけ多くの人々に」という意味を考えることであり、実行レベルでは、自社製品のアクセシビリティ(値段や流通の面で製品を手に入れやすさ)について考えることを意味するものだった。グラント氏はこう語る:


「社会経済的なあらゆる層の人々がダノン商品を買えるのか?ダノンブランドはどこで手に入るのか?高級オーガニックスーパーのホールフーズでは入手可能でも、大衆向けストアでは入手可能か?誰もが持ち運びやすいサイズのパッケージか?こうして、私たち自身に対して、そしてパートナーや従業員に対して、自分達が本気だと証明するようなオペレーション判断に行き着くのです。」


一つの例を紹介しよう。2019年、ダノンは米国でTwo Goodという新しいブランドを立ち上げた。Two Goodは糖分ゼロのクリーミーな乳製品ヨーグルトで、糖分を控えた健康的な選択肢を求める消費者のニーズに応えている。このブランドはまた、消費者が製品を購入すると、食品救済団体への寄付となり、健康的な食品へのアクセスを支援している。


パーパスをビジネスに「ハードワイア」する

「本気でパーパスを明確化して顕在化させたいのであれば、そのパーパスをビジネスにしっかりとハードワイアし(変更できずに回路で接続されたように組み込み)、そのパーパスを販売する商品にも組み込まないとならない」とグラント氏は説明する。


これまでに、ダノンがどのようにパーパスをCSR活動や中核事業の指針として活用したかを示している例を紹介した。パーパスドリブンになるための近道はないが、あるとすれば、ダノンが上記で示したようなことだろう。会社がビジネスのあらゆる場面で行わなければならない重要な意思決定に、パーパスを結びつけることだ。


パーパスは、鼓舞を与え、機能的である

ダノンのパーパスには、ビジネス上の意思決定にあたって2つの重要な要素がある:

  1. 「食を通じて健康をもたらす」

  2. 「できるだけ多くの人々に」

彼らのパーパスと上記の例は、パーパスを明文化する上での学びを与えてくれる。パーパスを策定し明文化する最終段階では、そのパーパスが経営判断の指針となりうるような構成になっているかどうかをチェックすることも重要だ。


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