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P&G元グローバルマーケティングオフィサーから学ぶ5つの重要な教訓


2008年10月、米国「Association of National Advertisers」のカンファレンスに、P&Gの元グローバル・マーケティング・オフィサー、ジム・ステンゲル氏が登壇した。退任を間近に控え、 P&Gの社員としての最後のキーノート講演だった。およそ1200人の関係者を前に、ステンゲル氏はP&Gでの25年間で自身が学んだ最も重要な5つのことを話した。


レッスン1:人を中心に置くこと

P&Gでの25年のキャリアの中で学んだ最も重要な教訓は、組織のあらゆる活動の中心に人を据えることの重要性である。この原則は、第二次世界大戦後のP&Gのトップ、Rhicard Deupreeの言葉にも示されている。

「たとえブランド、製造施設、オフィスがなくなっても、従業員さえいれば、10年以内にすべてを取り戻すことができる」。

この力強い主張は、企業の真の強みは人材にあること、そしてやる気とひらめきに満ちた能力のある人材こそが、ブランドの成功と回復力の原動力であることを強調している。


レッスン2:ハートとマインドの両方に働きかける

マーケティングにおいて感情的アプローチと理性的アプローチの両方でバランスをとることは、消費者と永続的かつ強いつながりを生み出すために極めて重要である。信頼、尊敬、誠実さ、情熱といった要素が成功につながるということを、個々人の「great relationship」に喩えて、マーケティングしていくよう次のように紹介している。 

「パッケージ、店頭でのプレゼンス、広告、顧客へのプレゼンテーションなど、私たちが行うすべてのことを、”great relationship”の考え方を起点にし、物事の進め方、測り方を違ったものにしていくことを薦めます」

Appleはこのアプローチで、卓越したカスタマーサービスとアップルストアでの個別講習などで深い繋がりを育てている。P&Gの分析によると、P&Gの最も強いブランドは感情的な領域で優れ、競争的な市場でもシェアを大幅に高めている。ハート(感情)とマインド(理性)のバランスを取ることで、ブランドのパフォーマンスを上げることができる。


レッスン3:結果に焦点を当てる

マーケティング業界では、短期的に戦略を行って支出ばかりが膨らみ、長期的なロイヤリティや消費者との関係構築には結びついていないケースがよくある。ステンゲルいわく、

「それは、業務がバタバタと舞い込む中で、ブランドが成果を上げる上で重要な点を見落としているからです。売上は重要ではありますが、ブランドの健全性の指標を見ないことには、その視野は短期的と言わざるを得ません」

P&Gの従業員評価は、①事業成果、②ブランドの健全性、③個々が出した結果、の三つの領域から行うという包括的なアプローチが採用されている。ステンゲルが強調したのは

「ビジネス、ブランド、個々、この3つでパフォーマンスを示さない限り、P&Gでは出世できないでしょう。」つまり、経営層は結果にフォーカスするシステム作りをしなければならず、その際に、ブランドの健全性、そして人々、の視点でもバランスを取ることが重要である。


レッスン4:創造性を豊かに

「組織はクリエイティブでないかぎり、偉大なブランドにはなりえません」

P&Gの成功の秘訣は、強固なクライアント(広告主)と広告代理店との関係にある。P&Gのような広告主は、一般的に左脳的。一方、広告代理店は典型的に右脳的である。優れた広告主と才能あるエージェンシーのタッグで、より全脳的なチームとなる。


ステンゲル曰く、P&Gが広告主として代理店を「非常に才能豊かで創造的、やや右脳的」な組織として受け入れるからこそ、この関係性が成功し、特別なものとなると説明する。

①分析的思考と創造的思考のバランスを取れておりチームが全脳的であること、②チームが一同に同じ方向でブランドを前進させていること、この二点が、複雑な問題を解決し、ブランドを持続的に成功させるためには不可欠である。


レッスン5:パーパスを持つ

最後の教訓として、ジム・ステンゲルはブランドの背後にあるパーパスの重要性を強調した。 

「パーパスは、結果さえも含めた、すべてを変えるものです。パーパスこそ、ブランドを持続可能に成長させるための唯一の方法です。」

彼はさらにパーパス・ブランディングをこう定義します:

人々を鼓舞し、やる気を引き出すような存在理由を持ち、全ての活動がそこから生まれることがパーパス・ブランディングです。それは、どこから来たのかをきちんと理解しているブランドであり、「なぜ私はここにいるのか?」という問いに答えているブランドであり、消費者と価値を共有するブランドであり、アジェンダがあるブランドであり、良い意味で多大な影響を与えるブランドのことです。

彼のP&Gでのキャリアを通じて、成功した目的主導のP&Gブランドが、理想や彼らとその顧客にとって意味のあることに動機づけられたチームを持っていたことを観察しました。彼は続けて、パーパスはまずブランドの従業員にとって本物でなければならないと指摘します。


まとめ

以上が、ジム・ステンゲル氏が挙げる5つのレッスンです:

  1. 人を中心に置く

  2. ハートとマインドの両方に働きかける

  3. 結果に焦点を当てる

  4. 創造性を豊かに

  5. パーパスを持つ

彼は次のように結論づけている:

「毎朝、これらの5つの教訓とともに1日をスタートし、これらをもとにブランドと人々に対して行動すれば、消費者との信頼、愛情、忠誠心をより深め、マーケティングやリーダーシップがより優れたものになるでしょう。」

 

以上5つの教訓はいかがだっただろうか。特に「今後パーパス・ブランディ ングが持続的成長をするための唯一の方法である」と断言した5番目については、パーパス・ブランディングのムーブメントがこの講演を機に加速 したと言っても過言ではない。かつてないほど不確実性の高まる現 在において、16年前のこの言葉は完璧に当てはまっていると言えよう。

 



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