コロナ禍中の2020年にサステナブルな紙パック入りのお水、「HAVARYS」を創業された矢野さん。企業やラグジュアリーブランド、行政をはじめ、コンビニやスーパーでも多数取り扱いが始まっている急成長ブランドの強さの秘訣をお伺いしました。
(インタビュー:SMO 齊藤 三希子)
身近なところからのサステナビリティ貢献を提案
齊藤:以前Vogueの記事でお見かけして、お会いしたいと思っていました。
矢野:ハバリーズのリリース後のすぐあとに取材が来た時の記事ですね。見ていただいて、ありがとうございます。
齊藤:あるインターナショナルスクールのカフェテリアでのお水はもうペットボトル 0 で、ハバリーズさんのお水になっていたり。
矢野:そうですね、外資系の企業さんで取り入れていただいているところが多いのですが、教育現場にもどんどん広がってきています。
齊藤:SMOオフィスの下にあるお店にも並んでいました。個人で買えるところは他にはどういったところで?
矢野:自社サイトでも売ってますし、Amazon、アスクルとかロハコでも売ってます。リアル店舗だとナチュラルローソンさんとか成城石井さんとかでも。
齊藤:パック入りの水に取り組もうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
矢野 :私の母方のファミリーが九州に水源を複数持っておりまして、実家がペットボトル、OEMを中心とした製造メーカーを事業として営んでいました。その中で、脱プラスチックが加速する中、「本当にこのままでいいのかな」と。日本国内の市場で一本も紙パックの水がないということに気づき、SDGsや脱プラスチックという観点で、大手と取引することで業界イノベーションを効果的に起こせるのではないかと思いました。水源や自然の重要性とセットで商品開発をしてやっていこうというのが背景になります。
脱プラスチックが加速する中、「本当にこのままでいいのかな」と
齊藤:お育ちになった環境から水源を大切にしようとか、産業を保護していこうというマインドがあったということなんですね。
矢野:そうですね、水って本当にどの観点からアプローチするかでまた問題が違うんですけど、水そのものがインフラ的で根幹的な機能を果たすものなので、生物や自然が機能してるかっていうところも含めた重要性への意識は、育った背景に由来します。
普通の人だと、水源って何?水脈はどこからくるの、掘るの?ってなる方もいるので(笑)
齊藤:SDGsや脱プラスチックにも、元々関心があったのですか?
矢野:私たちの世代だと、地球が危ないということで、リサイクルの重要性や環境問題などが、教科書の中だったりディスカッションとか教材のテーマとして義務教育の中に当然のごとく入っていましたし、絶対毎日ニュースにも出てくるので、解決すべき社会の重要な項目の一つとして身近にあったという感じです。
海を見に行ってストローを飲み込んだウミガメを見てショックを受けて・・・っていう具体的・衝撃的なエピソードからというよりは、必然的な時代の流れから、割と自然な流れでっていう表現の方が正しいかなと思います。
齊藤:決断されてから、開発、製品化までどれぐらい時間がかかったのでしょうか?
矢野:2020 年の 6 月に会社登記しましたが、その 1 年前ぐらいから情報収集を始めて、どういうスタイルの記事を組んでメディアリリースをするのか、デザイン、ブランドコンセプト、どういうターゲットの企業にアプローチするのか・・など頭の中でぐるぐるしながら準備をしてました。
登記の1ヶ月後にはVogueのインタビューに出て、そこから今に至る感じですね。 そんな1ヶ月で会えると思ってなかったのですが。
齊藤:今おっしゃった、ブランドコンセプトについては、どのようなものなのでしょうか。
矢野:まず私たちのキャッチコピーとして 「1 本の水から世界が変わる」っていうのを掲げています。昨今、環境配慮だ、SDGsだって言われていても、じゃあ「今日、今週、何か環境に対してアクションしましたか?」 と言うと皆さんドキッとしますよね。企業で脱プラを掲げながらも、なぜか会議にはペットボトルが出て矛盾が起きたりしています。そこでまずは小さな行動とか、身近なアクションがあって、そこから大きな変化を産むという理念で動いています。 その目の前のプラスチックボトルから削減して、まず第一歩として紙パックにしてみませんか?っていう提案で動いてるので、日常のささいなところからの環境配慮に取り組めるようなアプローチ、提案の仕方を心がけています。デザインもそうで、茶色いリサイクル素材でザ・サステナブル!というデザインよりも、もっと身近なライフスタイルに取り入れられるようなデザインで、ストーリー性のあるものを意識して形成してきました。
齊藤:それは素晴らしいですね。ハバリーズのお水を飲むことがエコだって分かっていない方でも、「もしかして!?」みたいな。
矢野:入り口は「可愛いな」「おしゃれだね」という理由で手に取ってもらうことによって、今まで「サステナビリティって何?」っていう方々にも関心、気づきを持ってもらい、結果的にこういう選択を自然にできるんだっていう、最初の一歩になる。なので、ライフスタイルに自然な形で取り入れられる商品展開、メッセージの謳い方は、徹底しています。
齊藤:一見順風満帆のようですが、苦労されたところなども相当あったのではないでしょうか?
矢野:創業時期がコロナ禍だったのには苦労しました。 2020 年の 6 月会社登記した頃、皆さん結構ピリついてる雰囲気で。スーパーへ買い物に行くのもどうなの?ってレベルだったので、営業や契約をして行かなければならない中でアポイントメントを取るのも拒否されました。大手でもないので、最初の契約では「どこの会社ですか? 」「どんな実績あるんですか?」って。コロナ禍で、全く 0からベースを作る営業は特に大変でした。
商品開発では、包材がなかなか対応できるものがなかったことですね。今まであまりなかった理由の 1 つでもあるんですけど、いわゆる牛乳パックのような紙パックで作られてるものにミネラルウォーターを充填すると、無味無臭なので紙の匂いが水に付いちゃうんですね。ハバリーズの紙包材は内部がきちんと特殊フィルムでカバーされて光を遮断していることで本当に匂いもつかず長期保存が可能です。ここまで作るのに時間かかりましたね。
齊藤: 最初はお水からっていうことだったんですけども、今後の展開としては継続してお水を拡大していくのか、水以外にも広げていくのでしょうか?
矢野:もちろんまだまだスタートしたばかりなので、まずは最初のステップとしてハバリーズを認知してもらって拡大して、ペットボトルから紙パックに切り替えて、なおかつ気候変動への負荷軽減に貢献してもらうというのがあります。そのあとの第 2 のステップとして、紙パックのリサイクル回収があります。そもそもリサイクル可能素材とか、再生可能素材とか謳われている商品でも、それを再生しないと意味ないじゃん、と。
齊藤:確かに、確かに!
矢野:石油由来のものよりは負荷はもちろん低いんですが、その再生可能のところを意味あるものにしたいという想いから、じゃあちゃんと再生しましょうと。再生される先っていうのはなかなか不透明で見えないことが多いんですが、紙のリサイクルってすごくシンプルで、大体がトイレットペーパーやティッシュペーパーに再生されるという流れなので、紙から紙への循環を可視化させようと。
それで、リサイクル回収を加速、促進させるものとしてハバリーズ リサイクルトイレットペーパーが生まれました。今まで多くの企業さんが、リサイクル回収を始めても、リサイクルフローがなかなかそのトライアルで終わることが多く。
私の考えになるんですけども、企業が100%負担でリサイクル回収をして当たり前、個人や導入企業は割引や特典がモチベーションでリサイクルしてあげているという感覚を無意識で持っていることが多い。時代が時代なので、そういうサイクルではなくて、個人も企業も参画できて、本当の意味で経済的にフロー的にも持続可能な形を目指したかったんです。そこで、回収ボックスに入ったこのトイレットペーパーが登場したんです。ハバリーズの水を飲み終えた空の容器を詰めてもらった後、送料無料の返送伝票が入っているので、貼り付けて返送するだけです。みんなwin-win、企業も個人も負担なく、リサイクル循環に自然な形で参加できる。
齊藤:いやすごい嬉しいです。本当におっしゃる通りなかなか再生可能素材使ってます、回収しますって言ってるところでも、その先に何になってるんだろうっていうのがわからないですよね。
矢野:結構皆さんリサイクルする「もの」から考えすぎて、ワンウェイの方向から考えるからなかなか進まなかったんですけど、私は逆の発想で。
齊藤:デザインも可愛いですね!
矢野:そう、持続可能性という意味でもデザインはすごい重要だなっていうのは常々思っておりまして、割とサステナブルとかグリーンとかっていうと、あんまりお金かけちゃいけないみたいなのがあるんですよね。でもサステナビリティって、経済性・環境性はもちろん大事なのですが、デザイン性も強く含まれてると私は思っています。
やっぱりダサいものは、ライフスタイルのなかで置きたくないし、ブランディングやマーケティングにも繋がるところで、広がっていかない。1人よがりのサステナビリティにならないように、デザイン性も大事にしています。
齊藤:いいですね。やっぱかっこいいとか最初のモチベーションって重要ですよね? なんか辛いとか我慢しなきゃいけないって続かないし。 矢野:日常のサステナビリティや環境配慮アクションに対して何かワクワク感やラグジュアリーさも一緒に兼ね備えることができるんだと、イメージをガラっと変えたくて。
齊藤:ブルーに統一したのには意味あるのですか?
矢野:ハバリーズの延長には水源保全や森林保全があり、デザインにある水の流れのように気候変動のみならず海洋汚染問題の提起につながって、マイクロプラスチック問題に貢献できるんですよと。包括的な環境配慮への姿勢をストーリーにして描いて表現してます。
齊藤:ちなみにこのハバリーズって社名、ブランド名はどこからきたんでしょうか?
矢野: 母方の実家が水源を複数持っていると先ほどお話しましたが、その第 1水源が大分
の「羽馬礼」(はばれい)っていう村にありまして、いまだに祖母が猫と住んでいます。そういう場所からルーツが来ていて[1] 、こういう事業を水脈も含めて未来、孫世代にもずっと継承してきている。私がこのビジネスをするのに、そのルーツからヒントやアイデアを得て出来ているっていうことを考えると、水源をはじめとする環境資源を大切に守っていきたいというフィロソフィーをちゃんと反映して、メッセージとして訴えています。名前の由来から「羽が生えた馬」=ペガサスなんですが、ペガサスのように天高く羽ばたいて、広がって欲しいというダブルの意味を込めて、このようなデザインになりました。
齊藤:デザインもご自分でされているとお聞きしたのですが。
矢野:最終の幅の調整とかはデザイナーさんですけど、基本は自分でイラストタッチを描いて、こういうコンセプトで、こういう世界観っていうディレクションなどもしています。一本のハバリーズの水が中心となって森林保全、木々の保全をしながら結果的にプラスチックを削減する、マイクロプラスチック問題にも貢献できるよっていう、人と共存という意味での持続可能性というメッセージを、上が木で地球がぐるっと回って海の世界に繋がるというデザインで表現しています。これを説明するシチュエーションも多いので、自分の言葉でしかしっかり話せないですし、思い入れがないとなかなか人にも届けられない。そういう意味ではせざるを得なかったって感じですよね。
目指すのは、リサイクルして当然、の無意識レベル
齊藤:今後 3 年後とか、目標っていうのはどこに置かれてるのですか?
矢野:もちろん、より多くの人たちにハバリーズを手にとってもらいたいというのもそうですし、何より日本はリサイクル率がなかなか低いんです。行政も含めてトライされてますけども、実際皆さんに、リサイクル何かしてますか?って聞いても「イエス」っていう方がほとんどいない。身近に、気軽に、楽にできるようになったらいいよね、っていうところで、今回のリサイクルエコシステムにフォーカスしてますけれども、再生可能素材はリサイクルして当たり前っていう段階まで広めていきたいです。水って皆さんに広めやすい、つまりメッセージが届きやすいですが、それを違う再生可能素材にも拡大して、環境にいい持続可能な形のリサイクル循環を目指しております。
齊藤:本当にすべて回していく、循環させていくということですね。
一口にSDGsとかサステナブルとかって経営者の方がおっしゃいますし、トライするんですけれども、おっしゃる通り、なんかちょっとやってるというレベルで、それ自体で終わってるというか、まだ繋がってない感じのところが多いと思うんですけど、実際はどうなんでしょうか?
矢野:全部ではないですけれども、割と「やってる感」、プロモーションのアクセサリーとして使われてる 1 面もあるかな?と感じます。先ほどの再生可能素材と書いてあっても、どう再生されてるんですか?とかっていう定量的なエビデンスの開示はなかったり、寄付するというケースでも、寄付も大事なんですけど、じゃあその先がどうなってるのかという透明性がなかったり。
齊藤:SDGs関連の部署作ったりとか。
矢野:そうです、そうです。そう言いながら社内はプラスチックのゴミで溢れてたり、ペーパーレスといいながら紙でめちゃくちゃ出力したり、DX してるって言いながらも同じコピーを取ってたりみたいな矛盾が割と多いので、もっと意識レベルから行動見直しをしないといけないと思うんです。
フェーズとして3段階あると思っていて、環境配慮の行動指針をわざわざ内外にアピールしなくちゃいけないところが1段階、そこから今だんだん第 2 段階に来てると思っていて、それが意識的に取り組むフェーズ。そこから、私たちが目指したいところはもっと無意識レベルでやるのが、第3段階のところです。わざわざ言ったり確認したりすることじゃないよね、私たちがプラスチック使わないのって当然じゃないの?っていうような社会になればいいなって思います。
齊藤:第 1、2 段階の途中というところで、経営者へのアドバイスとかありますか?
矢野:多分経営者の方は、大きな経営方針の一つとして環境配慮を含むパーパースをお持ちちだと思います。SDGsの気候変動対策などの環境配慮に関して日々の具体的なアクションに落とし込むことが難しい場合が多いので、小さなアクションとしてまず何ができるのかっていうのを見直していただけると。それが会議中の目の前の 1 本のプラスチックペットボトル 1 本かもしれません。できることは多分たくさんあるはずです。
齊藤:森も見ながら木もたまにチェックしてください、みたいな。
矢野:小さなことでも一貫していると企業としての説得力につながりますよね。脱炭素をやっているけど会議でペットボトルを出しているのでは、説得力に欠けるし、結局企業のブランドにも繋がると思うので、木を見て、御社の飲料を見直してくださいって(笑)。
齊藤:本当におっしゃる通りですね。息を吸うように、当たり前になっているといいなと思います。
矢野:すでに気づきがある企業さんは、本当に真摯にSDGsに取り組まれていて、営業しなくても私たちへ問い合わせして頂くケースが多くて。「うちの会議でお客さんに出す水はプラだとおかしい、脱炭素がいいですよね」、って調べてみたらハバリーズがある、問い合わせしてくるっていう流れで。そういう本当の意味で環境配慮に取り組まれている企業さんは現場レベルでも意識が高い方が多いので、とても話がスムーズにいくことが多いですね。
齊藤:そうした強いファンを持ってらっしゃるのは矢野さんの強い意思と一貫したビジョンがあるからだなって思いますね。
矢野:そうですね。有名なブランドや会社からローンチしたわけじゃないので、 0 からスタートする意味では本当にそこのメッセージ性が強くないと全く響かないとなっていうのは常に思っております。
齊藤:今、取引先さんは様々だと思うんですけども、法人が多いのか、 それとも小売の卸とか、どこが多いんでしょうか?
矢野:圧倒的に9 割が法人様で、やっぱり先ほどの SDGsを掲げているところでの社内需要や、あとお客様にお出ししたり。ホテル、教育現場や行政でも使っていただいております。
齊藤:そこに意識が向いてる経営者が増えているということですよね。
矢野:そうですね、増えているからこそ現場の小さいアクションの気づきになって、ハバリーズのファンによってコミュニティーがどんどん形成されていて、まだ広がっています。取引先の打ち合わせで「このお水いいね」ってなって、どこどこで見ました、というような問い合わせが多いです。
齊藤:すごいですね。いいサイクルが、いいブランドだしいいものだから広がってくんですね。成長しつづけるというイメージしかないですね。
矢野:サステナビリティだとか環境にいいことっていうのは個人で発信できる時代ですし、ボランティア団体や教育機関からでも発信できます。私たちのような小さな声、小さな会社でも大手とパートナーと組むことでメッセージが何百倍に拡大されて世に広まるので、それはビジネスを通じて発信した方が近道なのではないかと思っています。
齊藤:ラグジュアリーブランドとのタイアップなどもされていて、その辺りのブランディングに関するお話もお伺いしたいです。
矢野:自分たちから営業することはほとんどなく、本当に刺さるストーリーとデザイン、環境性の透明さをもって、メディア戦略も含めて展開していたら、結果的に先方からお問合せを頂いたという感じです。ポルシェさんのコラボも先方からで。ただ、そのチャンスが来た時にちゃんとそれを逃さないようにしておくことが大事だと思うので、その準備はしています。会社それぞれの魅力があるので一概には言えないですけど、やっぱりそういう(ハイブランドといった)企業は、シャープな鋭い視点を持たれている方ばかりなので、彼らを説得させるためそれなりにプレゼンする側もレベルを求められます。彼らに届くブランドを持ち、それをちゃんと伝える内容を形にしないと意味がない。それがあってこそ、結果的にその領域の方々がお客さんになってくれます。
特に水は差別化がとっても難しい商品なんですよ。業界的に安いし、価格も競争しやすい。水だけを飲んで味の違いが分かる人はなかなかいないので、ストーリー・企業ブランドをしっかり設定することによって、そのレッドオーシャンで、1 個違う観点のところから勝負できるようになる。
齊藤:ここまで来るのには先ほどの苦労も含め大変だったのでは?
矢野:業界的慣習によって値下げして欲しいと言われる場合もあります。でもブランド価値も含めて金額に反映されているので、それをどうカバーするかは、環境性や、ストーリー性と言ったところで。
齊藤:そこで折れないのは、さすがリーダーのコミットメントかと思います。これがないと良いブランドはなかなか作れないんですよね。
矢野:自分たちで独自の信念を貫いて、私たちに共感するブランドさん、会社さんをどんどん巻き込んで、台風、トルネードスタイルで展開しています。水を飲まないって人はいないので、メッセージを届けやすいという意味では拡大しやすいし、楽しみにしておりますね。
同世代・次世代へのメッセージ
齊藤:矢野さんのような Z 世代の意識の違いっていうのがすごく期待できるなっていうのは痛感します。そこはやっぱり教育のところが影響してるっていうのは感じますね。
矢野:普通の常識とか、当たり前みたいなスタンダードが全然、私たちの下の世代ももっと違うでしょうからね。
齊藤:そこはもう将来が楽しみになりました。とはいえ、矢野さんの同世代であっても、実は女性の起業家っていうのはまだ多くないと聞いています。多分これからは増えていくと思うんですけど、そういう方々に向けてなにかメッセージがあればお願いします。
矢野:そうですね、ビバレッジ業界というのが結構クローズドで年配の男性が多く、商社営業とかになると昔ながらの方々がいらっしゃる中で女性が起業して営業するというのは、なかなかやりにくい世界ですね(笑)。最初は、お嬢ちゃんが何してるの?失敗するんじゃないの?など全然柔軟に対応してくれなかったような方々が、実績や結果を出していくことで、最終的にそうした方々も味方になって応援してくださる。私みたいな女性でもできるんだと(笑)
こういう男性優位の古めかしい業界でもできたということで、若い世代に向けて女性起業家のロールモデルの一人になれば嬉しく思います。今はSNSなど情報へのアクセスも簡単にありますし、あまり障壁がない気がします。私自身多少の障壁があっても前向きにやって来たので、すべきことをやり続ければ結果的に周りも応援してくれるし、時代も時代なので、あまり女性ってことを意識しない方がむしろいいような気がしています。
「女性だからこう思われてるんじゃないかな、こういう風に言ったらこう見られてるかも」というのは全然気にしない方がいいかと。女性だから男性だからっていうよりも、個の時代だと思うんですよ。なので、私は私で勝負、たまたま女性ですけどぐらいのノリで、ニュートラルで、フラットな、バイアスを抜きにした意識で。
女性のエンパワーメント、みたいなのも、さらに若い世代からするとナンセンスで、女性から女性の権利を主張してるのが、違和感があるらしいんですね。
私も自分から女性だからこうっていうのは絶対持ち出さないですし、アピールもしないです。メディア的にはそういう場面もあったりするんですけど、なるべく実際の現場では本当にニュートラルにやっています。個の時代、自分自身がちゃんと結果を残すということを意識して仕事もしていったら、最終的に快適な毎日を過ごせると思いますね。実体験的に。
齊藤:そうですよね。個人とか性差とか関係なくて個でということですよね。
矢野:あと年齢も、国籍もね、見た目は、アクセサリーくらいな感じで。
齊藤:いや、本当そう思います。自由に、我慢とかしないで、やりたいことをやればいいのにって。
最後になりましたが、矢野さんにとって、御社のパーパス、そして、それとサステナビリティとの関係性を教えてください。
矢野:弊社のパーパスとは「1本の水から世界が変わる」、ハバリーズを通じて脱プラスチックのみならず水源・森林保全やリサイクル社会の実現を目指すことです。このパーパスを現実的に達成するためにサステナビリティが同時に存在します。ハバリーズのサステナビリティとは時代の流れをとらえながら、経済性・環境性・デザイン性の3軸を中心とした持続性によって構成されています。なので、確固たるパーパスはサステナビリティによって加速され実現されるものだと思っています。
矢野 玲美 (やの・れみ)
株式会社ハバリーズ 代表取締役
京都市生まれ。大学卒業後、外資系技術商社において中東でのプロジェクトに従事しながら、家業のミネラルウォーターメーカーの役員を務める。事業承継を模索するなかで、リサイクル回収や環境負荷が徹底配慮されたサステナブルな紙パックウォーター「HAVARY'S(ハバリーズ)」を扱う株式会社ハバリーズを2020年に起業。「1本の水から世界が変わる」という想いのもと、気候変動対策やリサイクル促進、水源・森林保全など参加型SDGsアイテムとして大手企業や有名ラグジュアリーブランド、行政などを中心に展開中。2022年に自社独自の「紙から紙への再生」を可視化したリサイクルエコシステムを構築。
<こちらの記事は、SMOタブロイド誌「TOKYO 2023」からの抜粋です。
タブロイド誌全編及び最新版の全編は、こちらよりダウンロードいただけます>
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