top of page
  • 執筆者の写真smo inc

(前編)パーパス・ドリブンな組織を認定する世界初の規格PAS 808を発表したBSI(英国規格協会)の日本におけるパーパスとは?

更新日:2023年6月27日


国際的に歴史のある規格協会であるBSI(英国規格協会)が、パーパス・ドリブンな組織を認定する世界初の国際規格PAS808を発表。このニュースを受けて、BSIグループジャパン株式会社の代表取締役社長である漆原 将樹氏に、詳細をお伺いしました。

(インタビュー:SMO 齊藤三希子)


 

齊藤:BSIさんがPAS808と呼ばれる、 パーパスドリブンの企業を認定する規格を開発されたことをお聞きして、これは!と思い、今日はお話を伺いに来ました。BSIさんはイギリスでとても有名な規格協会だと思いますが、日本の方にも分かりやすいようにご説明頂いても良いでしょうか。


漆原さん:BSIは「ブリティッシュ・スタンダード・インスティテューション(英国規格協会)」という名前で、120年強の歴史ある会社です。街を歩いていますとISOXXXXXの認証取得をよく見ると思うんですけど、その ISOという規格の 8割ほどを作っている会社になります。


齊藤:ほぼ大半がBSIさんで作られた規格ということですね。英国で歴史ある組織とのことですが、どのようなところから創業され、今に至っているのでしょうか。


漆原さん:ロンドンのタワーブリッジを設計した土木エンジニアが創業者で、土木技術者協会に、鉄鋼部門の標準化委員会の発足を提唱したことから始まりました。その後、あらゆる製品規格の標準化を進め、構造用綱のサイズの種類が175種類から113種類に、また鉄道においては75の異なる規格があったレールの軌間を 5 つに集約したという歴史があります。

つまり、世の中の複雑なものをシンプルにしてきたというところが、会社の生業でもあるんですね。

2000年前後にE メールやインターネットが一般に普及し始めたように記憶されている方も多いかと思いますが、BSIでは1995 年の時点で既にそれらの伸びを見越して、情報セキュリティマネジメントシステムの前身となるBS7799という規格を作るなど、世の中に必要とされるものを、一歩先を見据えて新たな規格を作って参りました。また規格作りだけでなく、トレーニングをしたり、認証したりと、一気貫通で提供できることが我々の 1 つの特徴であり、おそらく世界で唯一の会社だと思います。


これまで私たちは累計で5万9000ほど、年間では毎年 2500ほどの規格を作っているのですが、世の中のニーズや社会の課題に対して、共通理解が必要であり、多くの方が抱えてる共通の課題を解決していこう、という想いで規格を作ってきました。

我々が行ってきた事業を3つのキーワードで表すと「Simplify、 Standardize、 Improve」ですね。鉄道レールの規格を75から5つにまとめた面ではSimplify、規格を作ってきた面でStandardize、そしてお客様の経営課題を改善してきた面でImprove。改善については、今はビジネスの改善から社会の改善に貢献することで新たな事業基盤を創造していきたいと考えております。


(BSI Group Japan のパーパス資料より)


齊藤:その2500の規格はカテゴリーごとに分かれているかと思いますが、業界はある程度限定されているのですか?


漆原さん: 品質マネジメント、労働安全衛生、情報セキュリティ、事業継続マネジメントなど、特定の業界に限定されない経営する上での重要事項に携わっておりますので、多岐の業界に渡り、サービスを提供させていただいております。実際日本で上場されている企業様のうち、約7割は我々のお客様です。



パーパスドリブンの企業を認定するPAS808 の背景


齊藤:日本だけでもそれだけ網羅されているのですね!

さて、今回制定された、パーパスドリブンの企業を認定するPAS808 について、どのような規格なのかを教えてください。


漆原さん:PASは「Publicly Available Specification」の略で、PAS808は「パーパス・ドリブンな組織(パーパス・ドリブン・オーガニゼーション=PDO)」がその目的を達成するためのフレームワークで、英国本部のチームがKPMGさんなどと協力して作った国際規格です。ガイドラインを元にパーパスドリブンとなる企業を作ることを目指しています。


今「パーパス」や「イノベーション」など叫ばれる中でも、今 1番世界で求められている大きな課題の1つが「サステナビリティ」の推進だと考えております。サステナブルな未来を作っていくために企業のパーパスがあると思いますが、今回のPAS808は、今まさに社会にとって必要なサステナビリティを、どう実現、加速させていくかというものでもあります。 具体的には、「リスクって何だろう?」「そのOpportunityって何だろう?」 などと、フレームワークの中で分析し、社員の行動や考え方を植え付けていくこと、これが、基本的にPAS808が成し遂げようとすることになります。


齊藤:サステナビリティとパーパスは、切り離せないトピックであり、確かに無視できない現状がありますね。SMOで毎年発刊しているオリジナルタブロイドでは、今年まさにその2つをテーマに展開しました。

  

漆原さん:年間多くの規格が作られているなか、弊社でも、英国側から日本でプレスリリースを出すように依頼があるものは実はそう多くはなく、今年でいえば、このPAS808 とサステナブルファイナンス、そして近代奴隷制度に関するものくらいです。グローバルとして同時に取り組んでいくという意志の現れだと思います。




経営トレンドからみる日本の課題


齊藤:そのように、世界の経営トレンドを先取りしつつ、規格・認証化していっているBSIさんですが、サステナブルに加えて今後の企業経営はどういう方向に進んでいくのかのトレンドについて、お考えを聞かせてください。


漆原さん:今の課題としてBSIとして大きく捉えているのが 2 つあり、そのうちの1つがサステナビリティ、そしてもう1つは、デジタルトラストです。コロナ情勢で元々加速してきたこの二つが指数関数的に伸びるようになりました。



齊藤:サイバーセキュリティ問題ですね。これは世界的にはもちろんそうだと思いますが、日本ではどうでしょうか?


漆原さん:東京や大阪などの大都市は、以前は安全面で世界1位、2位を保ってきていたのですが、今はシドニーやシンガポールに抜かれてしまっている状況にあります。これは決して犯罪が増えているわけではなく、サイバーセキュリティに対する懸念が導いた結果、と捉えております。これだけデジタルが加速してきてるなかで、他国と比較して安心して使えるインフラがまだ整っていない。


齊藤:たしかに日本でもまだまだ年配層などでは現金主義の風潮が多く残っていますね。


漆原さん:OECD諸国の中でのキャッシュレス普及率でいえば、先進国の中でも日本はドイツに続いてワースト2で、まだ3割しかキャッシュレスが浸透していないんです。これからインバウンド需要を再度取り込んで加速していくためにはデジタルを安心安全に使える環境ができてないということに対し、日本社会全体で改善の余地があると考えています。  


齊藤:サステナビリティに関しては、日本の状況はどうでしょうか?


漆原さん:日本社会は国民性もあって、エコに対しては真摯に取り組んできましたが、ソーシャルの部分においてかなり遅れていて、ダイバーシティや、雇用の均等、年功序列など、人的資本の活用等の部分が進んでおらず、これは日本特有の課題だと考えています。

 

OECD諸国の中ですと、宗教的な風習がある国を除くと、家事の分担から会社内での雇用・昇進機会まで、男女の平等については日本が一番遅れているんですね。これからもっと人的資本を活用していく上では、特に PDO(パーパスドリブン組織)が、今後より必要とされてくるのではないかと捉えております。


齊藤:逆に日本だけ進んでいるというトレンドはありますか?


漆原さん:テクノロジーリーダーシップは日本の優れた部分だと思います。単に技術に優れた会社があるだけではなく、世界を見た時に自動車分野や薬品、医療分野をはじめ、様々な分野で世界をリードして活躍しているR&D大国だと思います。短期的な視点で踊らされず、中長期的に技術投資をしているという面で、いわゆる技術経営、テクニカルリーダーシップを発揮できていると思います。


齊藤:そうなのですね!いわゆるGAFAのような外資の IT 系と比べると日本の企業の R & D は少ない印象ですが、トータルで見ると意外と日本って投資しているのですね。他の国々を分析してみるといかがですか?


漆原さん:明日のマーケットのスタンダードを作っていくところが得意なのが中国で、自分たちのテクノロジーを世界に持ってきて、標準化できるのですね。その点は日本には改善の余地があると思います。携帯が出た時も、せっかくの技術革新が日本の中で生まれても、それを世界でもっと標準化できていれば、世界のマーケットでより勝てていたのではと。これが日本の課題の1つだと思います。日本の技術力だとか、イノベーティブな考え方をいかに世界に持っていけるかというところで、規格が実はドライバーになると思います。


アメリカ企業はデファクトスタンダードを取るのが上手いなと感じます。WINDOWSやiPhone などもそうですが、一度大きな経済圏を作って、それを一気に世界展開するデファクトはすごく得意だなと思います。一方、日本の会社や、ヨーロッパの会社などはあまりそこが得意ではありません。同じ土俵で戦うのではなくデファクトよりもデジュール、つまり規格を作って標準化していく方が日本に合っていると思います。GAFAみたいに戦わなくても、デジュール化により世界市場でお客様がリードできるお手伝いとして我々の価値を出していきたいなと思っています。


齊藤:BSIさんがいないと成り立たないですね。頼もしいソリューションです。


漆原さん:他に日本独自の規格を作る機関は多くあるのですが、戦う土俵を大きく広げられないリスクがあるので、そういう機関とも一緒になってやっていきたいですね。私たちがBSIジャパンとして日本にいる以上、グローバルに繋いでいく役割があると思っています。




中国とインドに大きく遅れを取る日本のパーパス事情


齊藤:さて、御社のPAS808発表に関するリリースによると、「”パーパス”があるのかどうか、(または何を意味するのか)わからない」という回答が、日本は21%と、他の国を大きく上回ってしまっているということでした。日本がなぜこのようにパーパス後進国になってしまっているのか、そして今後追いつけるのかについて、お考えを聞かせてください。


(BSIジャパン提供 企業の「存在意義(パーパス)」に関する意識調査結果より


漆原さん:私見も入りますが、いわゆる日本型経営を見た時に、3 種の神器と言われている、1)年功序列 2)生涯雇用 3)企業型労働組合があり、一生懸命歯を食いしばって頑張っていれば生活も守られ、賃金も増えて、安定してくるというモデルがあったので、今までは会社から言われることを一生懸命やっていけばよかった。自主的にパーパスを考える必要性が今までは大きくなかったのだと思います。


齊藤:遅れている日本企業は、逆に今後追いついていくのか、もしそうだとしたら何が重要なのかっていうポイントを教えてもらってもいいでしょうか。


漆原さん:私は、日本企業はキャッチアップできると思っています。日本はお客様や社会のためにすごく頑張れる文化が本質的にあると思うんですよね。その本来持っているものと、自分達のハート、戦略、志、・・・これらの複合要素が合わさって、戦略的な方向に正しく向かっていけることだと。日本は組織的でもチームスポーツでも同じ方向に向かうことは得意だと思うので、団結して、パーパスをディレクションして腹落ちできるように浸透していくことが大事だと思います。


齊藤:その団結でもやっぱり規格が重要なポイントになってくるのですね。


漆原さん:ダイバーシティや、サステナビリティなどについて、有価証券報告書で登録されてる方にアンケートを取ったとします。例えば企業に「サステナビリティ頑張ってますか、できていますか? 」と聞くと約 1/3の方がイエスって答えるのですが、投資家目線での評価としては1 桁台になっているのですよね。企業目線では 「頑張ってます!」っていうものの、現実的な評価は1 桁代なんです。「頑張ってる」じゃなくて、何を基準として「できてるか、できてないか」が重要になります。国際化が進んでいく中で、世界でグローバルスタンダードを統一し、それに照らし合わせてギャップや改善点をクリアにしてやっていくことは大事だと思ってます。


後編へつづく)


 

漆原 将樹(うるしはら・まさき)

BSIグループジャパン株式会社  代表取締役社長

兵庫県神戸市出身。

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(MBA)修了。

パナソニック、GE、GEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ(現日本ベーカーヒューズ)センシング事業アジアパシフィックGeneral Manager、シェフラージャパン産業機器事業部 プレジデントを経て2021年7月よりBSIグループジャパン株式会社 代表取締役社長に就任。 https://www.bsigroup.com/ja-JP/

Comments


記事: Blog2_Post

CONTACT US

エスエムオーは、組織がその存在理由である「パーパス」を軸にした強いブランドになれるよう、
パーパスの策定から浸透までのコンサルティングを行うブランディング会社です。

bottom of page