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  • 執筆者の写真smo inc

海外で注目を集めるサステナブルな取り組みにある共通点:平原依文のサステナビリティコラム⑦

更新日:2月21日

皆さん、こんにちは!SMOサステナビリティコンサルタントの平原です。

年が明け、早くも2ヶ月が経ちました。SDGs達成が目指される2030年まで、残すところあと6年と差し迫った今、改めてその目標に向けて何をすべきでしょうか?


誰もが身近な「食」「ファッション」の分野で、海外で注目を集めるサステナブルな取り組みをみてみると、異なる業界でありながら、本質の部分で共通する点が見えてきます。


ゴミ箱がない。真の廃棄物ゼロレストラン


2011年にオーストラリアで誕生したレストラン「SILO」は、「ゴミ箱のないレストラン」をコンセプトに掲げた、世界初の廃棄物ゼロレストランです。料理をしていれば、どうしても捨てざるを得ない食材の部分やパッケージなどがあるものですが、それを、どのように完全にゼロにしているのでしょうか。



SILOでは、地元の農家から商品をパッケージなしで購入し、敷地内にある好気性消化装置を使用して残り物を堆肥化しています。調理中に出た生ゴミも、厨房に設置された発酵槽で発酵させ、新たな食材の掛け合わせを探したり、調味料に変えており、これまでに野菜の皮から作った蜜やゴールデンビーツとリコッタを合わせた味噌ソースなどを開発しています。


さらに、提供されるワインは、詰め替えに対応しているワイナリーからのみ仕入れており、再利用できないワインボトルはレストランの照明器具用のセラミックガラスに加工されます。また、お皿はビニール袋、テーブルは食品パッケージのリサイクル製品です。


食材から内装まで、お店を構成する全てに徹底してサステナブルな物を選び、不要なものは自分たちで必要なものに変えて使い続ける取り組みが行われています。



水の使用量を従来の0.07%にまで抑えたジーンズ


2018年に設立され、イーストロンドンのスタジオに拠点を置く高級ファッションブランド「E.L.V. DENIM」は、100パーセントアップサイクル素材で作られた服を生産・販売しています。ブランド名にも入っているデニムで作られるジーンズは、新しく生産するために水10,000リットル(一人が 13 年間で飲む量)を必要とし、環境負荷が高いことで有名です。これをどのように解決しているのでしょうか。




E.L.V. DENIMでは、ジーンズのあらゆる部分をリサイクルして製品をつくっています。調達は、英国中のヴィンテージ倉庫を探して、埋立地に送られる前の古着のジーンズなどの高品質のデニムやシルクスカーフ、コットンシャツなどを集めます。それらを地元イーストロンドンのコインランドリーでクリーニングすることで、洗浄プロセスで使用する水をわずか 7 リットルに抑えています。その後、生地はスタジオに送られ、服を仕立てられる状態に整えられます。服を作る過程で必要なタグ用のレザーはソファなどの廃棄された革製品、タグはラベンダーの種が入った再生紙やデニムのはぎれをリサイクルして使用しており、徹底した取り組みで廃棄物ゼロを実現しています。


また、端切れはパッチワーク生地として再構築され、紙などの新しい素材として生まれ変わり、より小さな糸は断熱材に変わります。地元の学校や大学と協力して、テキスタイルのクラスに生地を提供したり、デニムを使ったアートを制作する著名なアーティスト、イアン・ベリーにスクラップを贈るなどの取り組みも行っています。



共通点は「理念を掲げ続けるリーダー」


ご紹介した二つの事例の共通点の一つは、「廃棄物ゼロ」という理念を掲げ、それを体現するために一切の妥協を許さないリーダーの存在です。


「SILO」のオーナーシェフ・ダグラス=マクマスター氏は、BBC から「英国最優秀若手シェフ」を受賞、「世界のベストレストラン50」に「美食の未来を形作る若者」の1人として認めらるなど、シェフとして世界で実力を認められます。その後、世界的なアーティストでゼロ・ウェイストの先見者であるジュースト・バッカーの下で働き、「ゴミ箱を持たない」というコンセプトに出会い、「Waste Is A Failure Of The Imagination(無駄は想像力の失敗である)」というタイトルのTEDTalkで注目を集めます。現在も食の未来についての講演活動を行うなど、廃棄物ゼロへの想いを持ち活動を続けています。


「E.L.V. DENIM」の創設者兼クリエイティブ ディレクター・アンナ=フォスター氏は、Marie-Claire などの雑誌でファッション編集者として働き、その後Lula Magazineのファッション ディレクターとしてファッション業界に 15 年間携わりました。2016年11月にLulaを辞め、E.L.V. DENIMを立ち上げた経歴の持ち主です。デニムを再利用するだけでなく、見栄えがよく、モダンでシックなジーンズを作りたい、そして地元のビジネスを支えたいという情熱を持ち、今のサプライチェーンを確立しました。



 


二つの事例の共通点は、生産から販売、その後の再利用までの「地図」を描き、実行していること、そして、廃棄物ゼロという理念の「旗」を掲げ、周囲を巻き込み続けるリーダーがいることでした。


サステナブルな取り組みは、今までのやり方を一から変える必要がある場合が多く、その道のりの長さに心が折れてしまいそうになることもあるかもしれません。これを乗り越え、SDGsが達成された未来を迎えるためには、その道のりに何があり、どう進んでいくのかを明確にし、進んだ先のゴールを見据え続けることが大切なのではないでしょうか。



 

 


平原 依文(ひらはら・いぶん)

SMO 広報・PR / サステナビリティコンサルタント

HI合同会社 代表 / 青年版ダボス会議 One Young World 日本代表


小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。早稲田大学国際教養学部卒業後、ジョンソン・エンド・ジョンソンで、デジタルマーケティングを担当。その後、多企業で広報とブランドコンサルティングを推進。2022年には自身の夢である「社会の境界線を溶かす」を実現するために、HI合同会社を設立。SDGs教育を軸に、国内外の企業や個人に対して、一人ひとりが自分の軸を通じて輝ける、持続可能な社会のあり方や ビジネスモデルを追求する。Forbes JAPAN 2021年度「今年の顔 100人」に選出。

 

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